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Business & Economic Review 2012年2月号

【特集 最適なわが国エネルギー需給体制の構築を目指して】
特集 最適なわが国エネルギー需給体制の構築を目指して

2012年01月25日 藤波匠


要約

  1. わが国のエネルギー需要は、オイルショック以降2000年頃まで、経済規模の拡大とともにおおむね右肩上がりで伸びてきた。しかし、2000年以降はほぼ横ばいと、政府の示す需要見通しを下回るようになり、リーマンショック以降は水準が大幅に低下した。こうした状況は、従来一般的であった「エネルギー需要は右肩上がり」という既成概念に変更を迫るものである。


  2. 現在政府では、「エネルギー基本計画」の見直し作業を進めている。本稿は、その策定過程における議論の一助となることを念頭に、最近の実情を踏まえて、2030年度までの電力を除くエネルギー需要について検討を行った(電力需要については、後段の藤山論文が担当する)。以下、とくに断りが無い限り、本稿では「エネルギー」といった場合、「電力以外のエネルギー」とする。

    エネルギー需要の将来推計を行うにあたり、前提となる経済成長率は、当面については当社最新見通しを援用し、2013年度以降については、政府による「長期エネルギー需給見通し(再計算)平成21年8月」における前提値を踏襲した。


  3. 部門別のエネルギー需要分析と将来推計の結果は以下の通り。

    ①製造業
    製造業のエネルギー消費は、1990年度から2007年度までは、原単位の悪化、生産規模の拡大が消費量を押し上げ、逆に素材から加工への産業構造の変化は押し下げに寄与し、トータルで微増。このような環境変化が持続することを前提とすると、将来の製造業におけるエネルギー消費量は増加基調となり、今後10年以上かけて、リーマンショック前の水準を回復することが見込まれる。

    ②旅客部門
    旅客部門のエネルギー消費量は、2001年度をピークに減少傾向。今後も、人口減少や高齢化などによる旅客輸送量の減少や自動車のエネルギー効率の向上が予想されることから、減少傾向が持続し、2030年度に2005年度比▲40%となる見込み。
    ③貨物部門
    貨物部門のエネルギー消費量は、トラック輸送業界の輸送効率向上などにより、1996年度をピークに右肩下がり。今後も効率の向上や、これまでほとんど効果が見られなかったモーダルシフトにも一定の政策効果が出てくることが期待され、減少傾向が持続し、2030年度には2005年度比▲41%となる見込み。

    ④家庭部門
    家庭部門のエネルギー消費は、電力へのシフトや住宅の熱効率向上により、1993年度以降ほぼ横ばいで推移した後、2006年度以降減少に転じた。今後は、世帯数の減少も見込まれ、2030年度には2005年度比▲44%と予想。

    ⑤業務部門
    業務部門のエネルギー消費は、床面積当たりのエネルギー消費が低下したことを主因に、2006年度をピークとして減少傾向。先行きは、最近のトレンドで効率向上が続く一方、床面積は2015年度をピークに減少に転じるという仮定のもと、2030年度には、2005年度比▲47%となることが見込まれる。


  4. 以上の部門別の展望を総合すると、わが国の電力を除くエネルギー需要は、今後一貫して減少することが見込まれ、2020年度には90年度の水準を下回り、2030年度には、2005年度比▲23%、90年度比▲14%まで低下する。このエネルギー需要の水準は、従来の国の推計を大幅に下回るものである。


  5. 従来、エネルギー基本計画は、右肩上がりのエネルギー需要の前提ありきで、その抑制と、それに見合う供給力の確保という視点に基づいていた感が強い。基本計画の見直しにあたっては、本稿が取り上げたわが国のエネルギー需要構造の変化にも目配りし、実勢に即したエネルギー需要に関してのしっかりとした現状認識と蓋然性の高い将来展望を持つことで、著しい変化の過程にあっても長く信頼の持てる指針となりうる基本計画を策定することが求められる。
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