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歴史の転換点に必要な外交姿勢

2015年10月27日 井熊均


 習近平国家主席をトップとする中国の訪問団は、イギリスで女王陛下以下から熱烈な歓迎を受けました。中国は巨額の投資を約束し、イギリスは中国の原子力発電技術を受け入れるなど、訪問は両国にとって大きな進展をもたらすことになりました。中国国内では新聞やテレビでイギリスでの熱烈な歓迎の状況が繰り返し、イギリスとの関係は黄金時代に入ったと報じられました。

 イギリスはAIIBの設立の際も、アメリカ等の意に反していち早く参加を決め我々を驚かせました。こうした外交姿勢に対して、いかに中国の経済力が巨大になったとはいえ「いかがなものか」、あるいは、「長くは続かない」と指摘をする人がいます。こうした指摘は正しいのでしょうか。アメリカは政治面で中国に厳しい姿勢を示しているように見えますが、習近平国家主席の訪米に対する経済界の姿勢はイギリスと同じようなものでした。政治は政治、経済は経済と見事に使い分けているのが欧米先進国です。

 世界経済は大西洋から太平洋に重心を移し、一世紀に一度とも言える大きな転換点を迎えています。新しい時代にも日本が豊かであるためには、国としての舵取りのあり方が問われます。いずれ、インドをはじめとする地域が世界経済の重要な核となる時代も来るでしょう。しかし、少なくともここ10年くらいは中国が世界経済に極めて大きな影響を与えることは間違いありません。にもかかわらず、世界最大の市場に対する日本国内の関心が盛り上がらないことに大きな懸念を覚えます。

 歴史的な転換点の時代に大切なのは、何枚ものカードをクールに使い分けるしたたかさです。メディアや経済が政治と一枚岩になり過ぎることで失われるものもあります。日本はそのことを十分に学んでいるはずです。


※メッセージは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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