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2005年12月16日

リース会計基準見直しに必要な視点

要旨
企業会計基準委員会(ASBJ)は先般、「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に売買処理と賃貸借処理との選択適用を認める規定は比較可能性の確保の妨げになるとして、「売買取引に準じた処理」をベースに検討する方向を示した。同委員会は今年度末を目標に結論を出したいとしている。
この方針のもとでは、最悪の場合、わが国において、企業が設備投資を行う際、借入れ・購入に比べて様々なメリットを有する「ファイナンス・リース」(以下本稿ではリースと呼ぶ)の利用機会が失われる恐れがある。
今般のリース会計基準見直し論議において、以下の4つの問題点を指摘したい。
1. わが国産業・企業への影響を考慮すべき:今般の会計基準見直しにおいて、財務諸表の比較が容易になるメリットは、あるとしても極めて限定的である半面、企業の設備投資手段として定着しているリースが利用不可能になる結果、回復基調にある設備投資に打撃を与えかねない。会計表記の形式を優先するあまり、会計基準の変更がわが国経済に与える影響を十分考慮せずに行う議論には問題がある。
2. 税務との一体解決を図るべき:企業会計基準委員会は、リース会計基準見直しにあたって税務には関与しない姿勢をみせているが、税務との調整が図られないままでは、税務と会計が密接に結びついたリース・ビジネスの重要な存在基盤が損なわれ、わが国企業が、リースを利用した設備投資の機会を失うことに繋がろう。会計基準見直しにあたっては、現行の税務処理を前提とした会計と税務との一体解決の道を示すべきである。
3. わが国固有の解決を図るべき:海外主要国では、中長期的理念としての「国際会計基準への収斂」の実現に向けて、「連単分離」などの措置によりリース取引に賃貸借処理を残し、リース存続の道を図るよう各国固有の対応をしている。わが国においてのみ、リースの賃貸借処理が廃止されるようなことになれば、わが国企業がリースという重要な設備調達手段を失い、わが国企業の国際競争力に大きな影響を与えよう。「国際会計基準への収斂」を視野に入れつつも、リース会計基準見直しにあたっては、各国の対応状況やわが国の実情を勘案し、国益を踏まえた議論をすべきである。
4. 見直しの時期を慎重に見極めるべき:わが国のリース会計基準は、EUにおける同等性評価にみられるように、国際会計基準との整合性の点で海外からみて問題とされていないうえ、国際会計基準においてもリース会計の変更が検討されている最中である。このように、わが国のリース会計基準の見直しを急ぐ必要がないばかりか、現時点での見直しは、将来の会計基準変更の二度手間をもたらす弊害をもたらしかねない。国際的な動向を踏まえ、見直し時期を慎重に見極めるべきである。
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