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2005年09月30日

人口減少時代への雇用システム改革 ~2015年までに500万人の“人材”不足の恐れ~

レポートの要旨
1.  2005年に入り、バブル崩壊以降のわが国の雇用情勢をめぐるトレンドに変化。「余剰人員の時代」が終焉し、「日本型雇用慣行」に対する再評価の動き。もっとも、バブル崩壊以前の日本的な雇用慣行が“復元”されるとみるのは早計。
 「人口減少」というトレンドが本格的に始動しつつあり、右肩上がりの経済成長を前提とした戦後日本型雇用システムが機能不全に陥っている事態は不変。本レポートでは、「余剰人員の時代」の次に訪れつつある“人口減少時代”の雇用のあり方を巡る新たな課題を浮き彫りにし、それに対応できる新しい雇用システムのあり方を提言。
2.  「余剰人員の時代」が終焉した後の雇用情勢の現状を確認しておけば、マクロで見れば過剰雇用が“漸く解消する程度の段階”と言えるが、必要な人材の不足がすでに深刻化。一方で、余剰人員も残っており、「雇用のミスマッチ」が拡大している状況。
 この要因としては、これまでの人材育成システムの機能が低下しているという問題が大きい。投入費用・時間が減少したという「量的問題」のみならず、人材投資の内容が時代の変化にミスマッチを起こし、教育投資の効率性が低下しているという「質的問題」が無視できず。後者については、とりわけ、今後の企業競争力の鍵となる「プロフェッショナル人材」「経営人材」を効率的に育成できる仕組みが整備されていない点が重大。
3.  人口減少が労働市場に及ぼす影響の第1は「労働力の多様化」を促すこと。人口減少は労働力供給の量的減少を意味するが、わが国では「夫片働き・定年退職」というライフスタイルが前提にされてきたため、女性および高齢者の労働力活用の余地が残されている。このため、定年前の男性という「典型労働力」の減少を補うために、女性や高齢者の就業者を活用することが求められる。さらに、これまでは原則門戸を閉ざしてきた外国人に対しても、一定の管理下のもとで計画的に労働市場を開放していくことはもはや待った無しの課題に。
4.  さらに、人口減少が労働市場に及ぼす影響としてもっとインパクトが大きいのは、「労働需要の質的変化」を促すこと。人口減少は、現在進行中の産業構造・事業環境の3つの潮流変化―①国内競争の激化・スピード化、②経営のグローバル化、③株主主権の強まり―を加速させることを通じて、経済活動における「市場原理(資本の論理)」の徹底を促す。それは個々の企業には互いの間の競争を激化させて、事業の創出・撤退を活発化させつつ高収益性の追及を要請する方向に作用する。この結果、雇用のあり方は「高度化・柔軟化・流動化」の方向に質的な転換を求められる。
5.  人口減少は「資本の論理」を強める方向に働くとはいえ、必ずしもわが国の雇用構造が米国のそれに収斂していくとは限らない。他の先進国に比べてわが国の持つ産業構造の特異性はその「ものづくり」基盤の強さにあり、今後のわが国の産業構造が向かう方向性は、「第2次産業から第3次産業へのシフト」というよりも、「第2次産業と第3次産業の融合を通じた2・5次産業化」ともいうべきものであろう。このことは、わが国における「労働需要の高度化・柔軟化・流動化」は、グローバル競争を勝ち抜くための経営人材、プロフェッショナル人材のほか、質の高い技能工・基幹事務職に対する需要も引き続き一定量生じることを意味している。
6.  労働需要構造の変化に対応した人材育成システムが構築されなければ、1%半ばの成長の達成に必要な人材(スキル)が、2015年までに520万人(専門・技術職で486万人、生産労働者で34万人)不足すると試算される。逆に言えば、これらの必要な人材が育成されない場合、企業が期待する1%半ばの実質経済成長率の達成は不可能であり、現実には実質経済成長率が低下するという形で辻褄が合わせられることになる。その結果、労働生産性の上昇スピードも低下し、一人当たり実質所得も低迷を余儀なくされる。このとき、女性・高齢者・外国人の活用で労働力供給を増やしていれば、ミスマッチの一層の深刻化により、「人口減少下の高失業」という皮肉な結果をもたらしかねない。
7.  したがって、人口減少下で労働生産性・生活水準の向上を実現していくには、人口減少時代到来が要請する「労働力の多様化」「労働需要の高度化・柔軟化・流動化」に対応した必要な人材が十分に供給される必要がある。そのためには、これまでの『人基準の正社員重視システム』から『仕事基準の多元的雇用システム』への転換が不可欠の条件であり、『仕事基準の多元的雇用システム』が十分機能するには、企業外に社会的人材育成インフラが整備されることが必要となる。
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