2005年08月12日 |
わが国経済を支える研究開発投資の動向 |
【要 旨】 |
(1)わが国の研究開発投資は、1990年代には一時的に減少する局面があったものの、2000年度以降は再び増勢が強まっている。研究開発投資の増勢に着目し、研究開発投資による経済成長率押し上げ効果を測定してみると、研究開発ストック1単位当たりの実質GDP押し上げ効果は上昇していることが認められた。この推計結果を基に経済成長率を要因分解してみると、1990年以降、研究開発ストックが経済成長率に対して最大の寄与となっており、これが経済成長を牽引してきたと言える。 (2)このように、研究開発投資が経済成長率を牽引してきた背景として、わが国企業が、利益の増減にさほど左右されず、研究開発投資を着実に拡大させてきた点を指摘できる。 (3)研究開発投資のケース分けをもとに、わが国の経済成長率を試算すると、以下の通り。 ①実質研究開発投資の増加率が従来ペースの6.2%(1980~2003年度平均)で推移 した場合には、経済成長率はバブル崩壊以降の平均1.3%を上回る2%弱になる。 ②増勢がさらに強まるケース(1980~1990年度平均の10.9%)では、3%弱の経済成 長率になる。 ③停滞するケース(1991~2003年度平均2.2%)では、バブル崩壊以降の平均成長率 をも下回る低成長になる。 (4)上記の①のケースでは堅調な経済成長が見込まれるが、必ずしもこのシナリオの実現が保証されているわけではなく、企業が短期的な収益性を重視する動きが強まれば、③のケースのように研究開発投資が停滞する可能性も排除できない。ケース③のように経済成長率がバブル崩壊以降の平均を下回るような事態を回避し、より高い経済成長が可能になる②のケースの実現を目指すためには、政策的支援を強化していくことが必要である。 (5)研究開発促進税制については、2005年度末で試験研究費総額に対する2%ポイントの上乗せ措置が撤廃された場合、税引き後利益が最大で2300億円程度減少するとみられる。研究開発投資の削減によって、税引き後利益を上乗せ措置の撤廃前の水準に維持しようとすれば、研究開発投資を4200億円程度(研究開発投資の3.6%)削減する必要が生じる。このような悪影響を考慮すると、支援措置の縮小には疑問があり、現行の優遇制度を延長すべきものと考えられる。 |