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2005年07月21日

不動産バブルと中国的改革

要旨
1. 中国の不動産市場に大きな異変が生じている。つい最近まで、上海や北京などの主要都市を中心に不動産価格は2桁の上昇を続けていたが、今や取引額、成約件数ともに急減しており、混迷の様相を呈している。それでは、中国の不動産バブルは崩壊するのであろうか。中国においては、かつての日本のように、不動産バブルが崩壊し、それに起因して経済が深刻な局面に陥る可能性は低いと考える。すなわち、不動産業が中国の経済成長を支える最も大きな柱の一つになっているため、中央から地方までの各レベルの政府が問題の抜本的解決よりも、これ以上深刻化させないことを目標に政策運営を進めると考えられるからである。
2. より重要なことは、今回の不動産バブルの生成過程において顕在化した中国的改革路線の限界である。なぜなら、いかなる産業部門よりも、不動産業ほど中国の政治・社会の実態を反映し、それを分析するにあたって参考になる産業分野はないからである。今回の不動産バブルの生成過程をみると、「中国的」ともいえる特色が大きな役割をはたしてきたことが分かる。すなわち、不動産の開発業者・仲介業者や投機筋といった利益グループと政府、とりわけ地方政府が実質的に一種の利益共同体を形成し、不動産に対する需給関係の形成や政策の意思決定、世論などに対する影響力を駆使しつつ不動産価格を意図的に急騰させてきたのである。
3. それでは、不動産市場のソフトランディングに向けた抜本的な改革はなぜできないのであろうか。最大の原因は市場経済化を進めるなかで、政治システムの改革を躊躇してきたこれまでの「政経分離」型改革路線の限界に求めることができる。すなわち、第1に「政経分離」であるがゆえに、党・政府がいつまでも経済活動の主役としての立場から身をひくことができないことである。第2に市場経済化の進展に伴って社会の多元化が進んできたにもかかわらず、それに対応する政治システムの改革が立ち遅れたために、資本と権力を持つ、またはそれにアクセスできる「強者」と、そうでない「弱者」に二極化した社会が形成されてしまったことである。
4. 「政経分離」による漸進的改革は、これまで中国に経済成長という成果をもたらしてきたが、今や持続的成長基盤を構築するにあたっての大きな足かせとなっている。不動産市場の問題をはじめ、中国経済が新たな発展段階にソフトランディングしていくためには、抜本的改革の断行を避けては通れない段階に差し掛かっている。
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