要旨 |
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高齢化に伴い生産年齢人口の減少に拍車がかかるなか、わが国の成長率が低下するとの懸念が台頭。もっとも、経済成長率を労働投入量の伸びと労働生産性の伸びに分けて分析すると、少なくとも2025年までは底堅い成長率を維持することは可能。 |
(2) |
まず、労働投入量は、現在の就業構造を前提とすれば2025年まで年平均▲0.64%の減少となるが、①バブル崩壊後の景気低迷の長期化を背景に積み上がっている非稼働労働力を活用する、②欧米諸国に比べ際立って高い高齢者の就業意欲を活かして雇用に結びつける、③30歳代の女性の就業率を欧米並みに引き上げる、という三つの手段により、年平均▲0.18%にまで減少ペースを抑制することが可能。次に、労働生産性は、都道府県別のクロスセクション・データでみても、時系列データでみても、少なくともこれまでのところは、高齢化によって低下するという因果関係は看取されず。 |
(3) |
以上の分析を踏まえると、高齢化により生産年齢人口が減少するなかでも、わが国経済が年2%近い成長を持続することは十分に可能。むしろ、1990年以降の平均成長率が1.4%であったことを考えると、成長率が上昇することも展望可能。また、人口が減少に転じるなかでの成長持続によって、一人当たり所得が増大し「豊かさ」が高まる可能性も。 |
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こうしたシナリオを実現するためには、成長率維持のカギを握る労働生産性と就業率を引き上げていくための政策支援が必要。 |