9項目の中には、CGIF(Credit Guarantee and Investment Facility)の業務開始やABMF(ASEAN+3 Bond Markets Forum)の活動強化が含まれている。2010年11月に設立されたCGIFの役割は、域内の投資適格企業(現地の格付け機関の格付けにより判断)の現地通貨建て債券発行を、100%の元利支払保証により支援することにある。主な保証対象としては、①クロスボーダー発行となる債券、②投資適格ではあるが単独では債券発行が困難な比較的格付けが低い企業が発行する債券、③保証により発行期間が伸長できる債券、などが想定されている。主にASEAN5カ国(インドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイ)の発行体を想定しているが、将来的には、その他のASEAN諸国(BCLMV)の発行体が日中韓や自国の市場で発行するケースなども視野に入れている。今年4月、第1号案件として、香港の商社ノーブル・グループが発行するタイバーツ債(期間3年、約1億ドル相当)に対する保証が実施された。CGIFの資本金は7億ドルと小さいため、今後、増資が課題となる可能性が高い。
一方、ABMFは2010年に設立された官民連携フォーラムであり、域内共通のプロ投資家向け債券発行プログラム(AMBIF:ASEAN+3 Multi-currency Bond Issuance Framework)の採用や各国の決済システムの向上・統合を目標に、3カ月に1回程度域内各国で会合を開き、議論を続けている。7月下旬には、第13回会合が第1回以来2度目となる東京で開催された。参加者は100人規模に拡大し、域内金融統合促進を目指すユニークな議論の場となっている。
■日本とASEAN各国との2国間金融協力の強化 ABMIにおいて日本は中心的な役割を果たしているが、5月にはこれに加えてASEAN各国(インドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイ)との間で2国間金融協力を強化することが発表された。これは、CMIM(Chiang Mai Initiative Multilateralisation)やABMIを含む多国間協力が一定の成果を上げたことから、新たに2国間での政策対話や協力を加えることで、①金融協力を一段と推進すること、②経済発展段階の相違等により各国ごとに異なるニーズにきめ細かく応え、域内内需の促進に役立てること、③活発化する日本企業のアジアにおける事業活動を現地通貨資金調達などの側面から支援すること、などを目指したものである。