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アジア・マンスリー 2013年4月号

【トピックス】
中国での日本車の評価と中長期見通し

2013年04月01日 関辰一


日本車の品質とアフターサービスが中国で高く評価されている。日本車はより良い車を望む中国の消費者にとって代替困難なものになっている。所得向上と買い替え需要の拡大は日本車の追い風になろう。

■回復する中国の日本車販売
中国における日本車の販売台数は、反日デモの影響を受けて2012年9~10月に前年比5割減となったものの、その後は着実に回復している。

この背景として、デモが鎮静化したことに加え、日本車が以下の2点で高く評価され、より良い車を望む中国の消費者にとって代替困難なものになっていることを指摘できる。
第1に、品質が高い。市場調査会社の米J.D.パワーが、2012年7~9月に中国の37都市で行った品質調査によると、調査した全11セグメントのうち、ラグジュアリーやアッパー・プレミアム・ミドルサイズなど7セグメントで日系ブランドの車がトップを獲得した(調査は2009年6月~2010年8月に新車を購入した消費者を対象に、購入した147モデルに対して、不具合指摘件数を算出し、少ない順に並べ替えたもの。回答件数は1万4,127件)。

第2に、アフターサービスが良い。同じく米J.D.パワーが、2012年2~5月に37都市で、2010年2月~2011年5月に新車を購入した消費者を対象に、整備や修理など正規販売店のアフターサービスに関する顧客満足度を調べたところ、主要日系ブランドはいずれも業界平均値を上回った(回答数は1万4,657人)。さらに、業界平均を上回った23ブランドのうち、トップ3はいずれも日系ブランドであった。

■追い風となる所得向上と買い替え需要の拡大
では、日本車を高く評価している消費者はどのような特性を持っているのだろうか。第1に、日本車は所得水準が相対的に高い沿海部で根強い人気を得ている。フォーイン社の『中国乗用車市場トレンド2009』によると、2008年のトヨタの乗用車登録台数49万2,128台のうち、沿海部が34万6,786台と全体の70.5%を占めた。なお、2011年の沿海都市部の1人あたり可処分所得は2万5,220元と内陸都市部の1万8,008元を大きく上回っている。このような沿海部の消費者は、価格だけでなく品質やアフターサービスも重視しているものと考えられる。

対照的に、韓国車や中国車は内陸部の中小都市で強みを持っている。2008年、沿海部で登録された奇瑞車(中国メーカー)は全体の46.3%にとどまる一方、内陸部のシェアは53.7%に上る。現代車(韓国メーカー)は沿海部55.1%、内陸部44.9%と、トヨタやGM、VWに比べて、内陸部のシェアが高くなっている。所得水準の低い内陸部の消費者は価格をより重視しているためである。

第2に、日本車は買い替え層により評価されている。2011年の中国自動車市場の買い替え需要は全体の16%にとどまるが、日本車では買い替えの比率がさらに高いとみられており、買い替え需要をうまく取り込んでいる。買い替え層はより高い品質や良いアフターサービスを望むためである。

今後を展望すると、内陸部においても、沿海部と同様に所得水準の上昇に伴い品質やアフターサービスに対する要望が高まると見込まれる。また、自動車保有率が高まるにつれ、買い替え需要が一段と増加していく公算が大きい。これまでの普及ペースを踏まえ、2040年までの中国自動車市場を試算すると、買い替え需要は2011年の300万台から、2020年に1,200万台、2030年に2,100万台、2040年に2,900万台に大きく拡大していくと見込まれる。市場全体に占めるシェアは、2020年に37%、2030年に54%、2040年に68%へ上昇していく見通しである。

これらは、高所得者層をターゲットに高品質・満足度の高いサービスなどに強みを持つ日系メーカーの追い風になる公算が大きい。今後、品質やアフターサービスなどの面で中国メーカーや韓国メーカーの追い上げも予想されるものの、ハイブリッドなどの環境技術に加え、足元で評価されている品質やサービスに一段と磨きをかけていけば、日本車のシェアは上昇していくものと見込まれる。
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