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CSRを巡る動き:女性の活躍支援

2013年03月01日 ESGリサーチセンター


 2012年10月、ラガルド国際通貨基金(IMF)専務理事が、IMFと日本銀行主催のセミナーにおいて、日本人女性の半分は労働に参加しておらず、働ける文化を整備し、女性の労働参加が広がることで、日本経済の成長に寄与することを指摘しました。

 総務省 (*1)によれば、25~44歳の女性の就業率は、1991年では61.4%であったのに対し、2011年の66.9%と上昇をしています。25~44歳の働く女性の割合は、以前と比べて増えていることを示しています。一方、年齢階級別就業率では、就業率のピークが「25~29歳」、ボトムは「35~39歳」となっており、“M字型カーブ”を描いています。“M字型カーブ”のボトムの部分は年々年齢が上昇しているものの、依然として落ち込みが見られており、男性にはこのような落ち込みがないことと対照的です。働く女性は相対的に増えているものの、現在にいたっても、家庭と仕事の両立における負担や支援制度が充実していないことが、女性の就業継続を困難にしている理由の1つとして考えられます。

 女性の活躍支援は、少子高齢化が進む国内において、働き手不足の問題解消の方策の1つとしても重要視されています。政府も、2012年6月、「女性の活躍による経済活性化を推進する関係閣僚会議」が「女性の活躍促進による経済活性化行動計画 働く『なでしこ』大作戦」を策定しました。働く「なでしこ」大作戦とその後に閣議決定された日本再生戦略に基づき、女性活躍に関する指標の公表など資本市場における企業の取組みを促す方策について検討することを目的とした、女性の活躍状況の資本市場における「見える化」に関する検討も始まりました。検討会の報告では、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」において役員への女性登用の状況に関する情報の開示を促すことなどが提言されました。

 IMF(*2)によれば、日本における女性の管理職が著しく低いことも指摘されています。米国では女性の管理職が43%であるのに対し日本は 9%で、この数値はタイ、中国、インドネシアといった他のアジア諸国と比べても、非常に低い数値となっています。男性に比べて女性の登用が進んでいないこと、それが結果として賃金の格差要因になっている状況が窺えます。今後、国内で働く女性が増え、管理職等に登用される女性も増えれば、女性が受け取る賃金の上昇につながることが期待されます。企業にとっても、女性の賃金が上昇し、購買力が高まることで、新たな製品・サービスを創出できる機会が得られるのではないでしょうか。

 企業価値向上への寄与という視点においては、女性ならではの視点が入ることによって、製品・サービスにおける今までにないイノベーションが創出されることや、事業プロセスが改善されるといったメリットを指摘する声も出てきています。ここ数年、一部のB to C企業においては、研究開発やマーケティング職を中心に女性従業員の積極的な採用や、女性を中心とした開発チームの設置、店舗における女性店長の積極的な登用を行うところなども出てきているのはこうした狙いからでしょう。

 各企業が女性の活躍支援推進に実際に取組む際には、定石といえるメソッドはなく、自社の業態に合わせて、独自に試行錯誤していかなければならないことも事実です。ただ、その過程において、男性も含め、従来の業務内容や業務の効率性、賃金との関係が公平かつ適正なものであるのか、改めて見直しを行うことは必須でしょう。高齢者や外国人といった多様な人材の活用も今後の課題となるなか、女性の活躍支援に取組むことは、多様な人材を受け入れる土壌づくりに重要な一歩となるのではないでしょうか。

以上

出所:
(*1)総務省統計局「労働力調査」
2011年の数値は、岩手県、宮城県及び福島県を除く全国結果
(*2)ファイナンス&ディベロップメント( 2012年12月)
参考資料:厚生労働省平成23年版「働く女性の実情」
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