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求められる分散コジェネシステムの統合管理のしくみ

2012年10月10日 松井英章


福島第一原子力発電所の事故以来、電源における原発の将来的なシェアを巡る議論は国論を二分しており、その最終的な決着はまだ不透明だが、少なくとも原発依存度を中長期的に下げる方向にあることは既定路線といってよいだろう。そこで注目を浴びているのは再生可能エネルギーであるが、出力変動の大きい電力システムが主力となるためには時間を要し、少なくとも当面は天然ガスの有効利用こそ本命とみる専門家も多い。ここでは、天然ガスの有効利用について見てみよう。

天然ガスは決して新しいエネルギー源ではないが、その発電時のCO2排出量が石炭や石油よりも少なく、SOxやNOxなどの環境汚染物質の排出も少ない。そして何より、従来の中東偏在のガス田ではなく世界各地に存在する頁岩(シェール)層から採取する技術が発達し、供給力の増大が期待されていることから、注目を浴びている。原発代替ということで先ず思いつくのは、天然ガス火力発電所のシェア拡大である。実際、例えば中部電力の西名古屋火力発電所向けに、GEと東芝が連携して販売している、プラント熱効率で世界最高効率の62%を実現したガスタービンコンバインドサイクル発電システムの納入が決まったというニュースが9月下旬に報道されたところである。今後、こうした高効率な発電システムは他の発電所でも普及していくことだろう。

ただ、こうした大型で最新型の高効率発電システムをも総合エネルギー効率で凌駕するシステムがある。コジェネレーション(以下、コジェネ)である。発電時に用いる余剰熱を空調などに利用することで、総合効率は80%、中には90%を超えるケースもある。コジェネは比較的枯れた技術であり、特別新しいものではないが、化石燃料の持つエネルギーを“使い尽くす”技術として重要である。実際、総合エネルギー調査会基本問題委員会でも、エネルギーミックスにおけるコジェネのシェアを15%まで高めるとする議論が展開された。

コジェネは上述の大型高効率発電システムとは大きく異なる特徴がある。その余剰熱の活用のためには、発電設備を従来の火力発電所のように人里離れた場所ではなく、ビルや家庭などの需要地に導入することが求められるという点である。こうしたシステムのシェアを15%まで高めるということは、電力会社が電力需要と供給を常に一致すべく需給のすべてを調整するという、従来の大規模集中系統システムに全て依存する状態からの脱却を意味する。工場やビル、家庭に導入される個別で分散したコジェネシステムを、どのように大規模電力系統と調和させていくのか。それには、個々の小さなシステム発電出力を集約、管理する事業体の登場が求められるだろう。こうした事業体のあり方は、エネルギーミックスとは別に議論されている電力自由化の議論にも組み込んで考えていく必要がある。

さらに、コジェネは日本だけに求められる技術ではない。エネルギーセキュリティ確保が急がれる中国でも、政府が普及を目指すシステムである。コジェネ単体の技術だけでなく、そのバラバラの出力を需要制御とともに統合・管理する技術や仕組みを確立すれば、中国をはじめ世界展開に向けても有望だろう。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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