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【ESG投資の注目点】「ウォッシュ」批判からの正確な情報開示

2011年09月01日 ESGリサーチセンター、長谷直子


今年の5月に、アメリカの航空会社が環境団体から「グリーンウォッシュ」批判を受けたという報道があった。「グリーンウォッシュ」とは、実際には環境への配慮が十分でない製品やサービスを、あたかも環境に配慮しているように見せかけることや、実態以上に環境に配慮しているように見せかけることを指す。英語で「上辺を取り繕う」「ごまかし」を意味する「ホワイトウォッシュ」と、「グリーン」(=環境に配慮した)を掛け合わせた造語である。航空業界では、航空機の運航に伴い環境汚染物質や温室効果ガスを排出しているが、その一方で安易にグリーンな印象付けを行おうとしていたことから、こうした批判を受けたとみられる。

環境、社会、ガバナンスに関する取組みを正確に、かつ分かりやすく開示することは、企業にとって重要な課題である。社会的責任を果たしている企業として顧客にプラスのイメージを与えることは、ビジネス戦略の一つと言える。自社の製品やサービスについても、好意的なイメージが確立されれば、売り上げ向上につながるだろう。企業が出すCSR報告書なども、最近は分かりやすく取組み内容が示されており、対外的なアピールの仕方がうまくなっている。しかし、分かりやすさや体裁の良さを追求するあまり、伝える情報の正確性を欠いては逆効果となる。

批判の対象となるのは環境問題への取組みだけではない。人道主義の仮面をかぶることを、国連の青旗に因んで「ブルーウォッシュ」という。例えば、人権侵害や強制労働の実態がありながら、国連グローバル・コンパクトに加盟し、企業イメージを取り繕うことなどが挙げられる。ステークホルダーとの連携は重要だが、パートナーシップの形式だけが先行し本質的な取組みが行われていない場合も、ブルーウォッシュの対象となることがある。

近年、上記のようなグリーンウォッシュ、ブルーウォッシュ批判が、NGOや消費者から頻繁に出ている。批判に晒される企業には疎ましいかも知れないが、企業の実態を見抜こうとする傾向が強まることは歓迎すべきであろう。企業側はより正確な情報開示に努めざるを得ず、投資家にとっては、より公正な情報が与えられ、真に社会的責任に優れた企業を選べるようになるチャンスと言えるからである。今後も、こうした批判がなされることで、企業において上辺だけではない、本質的な取組みが進むことを期待したい。実態を伴った情報開示を行う企業こそが、ESG投資においても注目すべき企業と言えるだろう。

*この原稿は2011年8月に金融情報ベンダーのQUICKに配信したものです。
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