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【ESG投資の注目点】ソーシャルメディア時代のESG投資

2011年09月01日 ESGリサーチセンター、岩崎薫里


ソーシャルメディアの最近の普及スピードには目をみはるものがある。いまやフェイスブックの利用者は世界で7億5000万人を超え、ツイッターでは1日平均1億4000のツイート(つぶやき)が投稿される。

また、世界のインターネット上のウェブサイトのアクセス件数ランキングをみると、上位10サイト中5サイトがソーシャルメディア関連であった。こうした状況下、ソーシャルメディアでは公式のみならず非公式の企業情報や、企業に関するさまざまな評価・意見が飛び交うようになっている。誰でも発信源になれるうえ、情報伝達のスピードや範囲が既存のメディアに比べて飛躍的に向上するもとで、企業としてももはや自社の情報をコントロールできなくなっている。

ソーシャルメディアの普及は企業への投資にも影響を与えると見込まれる。まず、投資家は企業に関するより広範で多角的な情報を迅速に入手できるようになる。企業が隠蔽を目論むかもしれない不祥事情報も例外ではない。また、投資家が企業に要望を伝えたり企業の真意を確認したりすることが従来よりも容易になる。

さらに、より根本的には、企業評価のあり方が大きく変わるとみておくべきであろう。フェイスブックの「いいね!」ボタンに代表される通り、ソーシャルメディア時代のキーワードは「共感」である。情報の洪水のなかで埋没せず広く伝達されるのは、人々の共感を得られたものだけである。誰もが情報発信源になる可能性がある点を踏まえると、ここでの「人々」は単に既存顧客にとどまらず、社会のあらゆる構成員が含まれることになる。共感の輪が広がることにより、その企業が支持され存続することが可能になる。逆に、反発の輪が広がると企業の存続が危ぶまれることになる。

それでは、企業が広く共感を得るためには何が必要か。最も重要なのは、社会とのつながりである。社会に開かれた組織として、社会の声を常に聞く、自社にとって好ましい情報だけでなく都合の悪い情報も積極的に開示する、こうした姿勢を経営陣はもとより従業員の一人一人が共有する、などが考えられる。企業を評価するに際しても、このような要素を勘案することが求められるようになる。

もっとも、企業がESG課題に取り組むことは、社会の一員としての責任を果たすことである。企業がESG課題に真剣に向き合おうとすれば自ずと社会とのつながりを強めざるを得ず、結果的にこうした要素を取り入れていくことになる。このように考えると、ソーシャルメディア時代には企業のESG課題への取り組みが従来にも増して重要になるとともに、投資判断においてもESGの視点が一段と有効になろう。

*この原稿は2011年8月に金融情報ベンダーのQUICKに配信したものです。
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