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Business & Economic Review 2011年11月号

【特集 拡大する新興国経済と日本の対応】
安定性と持続性を高めるインドネシア経済

2011年10月25日 三浦有史


要約

  1. インドネシアは個人消費と投資を牽引役とした安定した経済成長を遂げている。成長率が際立って高いわけではないが、金融危機によって大幅に低下することはなく、また、低下が予想される状態にもない。個人消費は旺盛で、バイクと自動車の販売台数は過去最高を記録した前年実績を上回ると予想される。安定した物価や消費者ローンの拡大が消費を支えている。


  2. 成長を牽引するもう一つのエンジンが投資である。外国直接投資および国内民間投資はともに伸張しており、内需拡大に焦点をあてた投資が今後も続くとみられる。株価もこうした状況を反映し、上昇が続いている。政府は、8月、パイオニア分野に対する1兆ルピア以上の投資に対する法人税の減免措置を発表した。投資調整庁(BKPM)は2011年の目標に掲げた240兆ルピアの投資を実現可能とみている。また、石炭とパーム油の輸出が好調で成長を支える要因となっている。


  3. もちろん、課題がないわけではない。中長期的にみれば、産業の高付加価値化を通じた競争力強化が不可欠である。世界市場における各国の競争力を顕示比較優位指数でみると、インドネシアは東アジアのなかで労働集約的産業と機械・輸送機器のいずれにおいても比較優位が低下し、アジアで展開されているサプライチェーンに組み込まれていない。インドネシアの競争力を高めるには、内外の投資をさらに活性化させる必要があるが、投資環境の改善はソフトおよびハードの両面で遅れている。


  4. 政府はPPP(Public Private Partnership)によって民間資金、とりわけ外国投資をインフラ整備に取り込むことに期待を寄せているが、関係する省庁・企業が多岐にわたり、それぞれが各プロジェクトに対してインドネシア側がどの程度のリスクを負うべきかについてコンセンサスを得るに至っていないことから、先行きを楽観することはできない。


  5. 一方、インドネシアは中国やベトナムにない幾つかの評価すべき特徴を有している。その一つは、財政規律の高さである。これはマクロ経済の安定性を高め、同国に対する評価を高める一因となっている。経済成長の持続性を高めるためには、エネルギー補助金の削減と同時に歳入の増加を図り、インフラや社会保障などのセーフティーネットの整備を進めることが望まれる。


  6. もう一つの特徴は民主化とともにガバナンスが改善していることである。インドネシアのガバナンスは絶対的水準において依然として低いものの、中国やベトナムに比べ改善が進んでいる。世界銀行は2021~2025年の世界経済の成長率に対する寄与度を推計し、インドネシアを中国、ユーロ圏、アメリカ、インド、日本、イギリスに次いで7番目に位置付けた。政府が改革に真摯に向き合い、その潜在力が発揮された場合、インドネシアはわが国にとってこれまで以上の重要なパートナーになるであろう。
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