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Business & Economic Review 2011年10月号

【特集 世界の金融の新しい潮流】
台頭するソーシャルメディアの金融ビジネスへの影響

2011年09月26日 野村敦子


要約

  1. ソーシャルメディアとは、利用者がインターネットを通じて情報の発信・交換・共有を行ったり、利用者間で交流するためのウェブ上の場(コミュニティ)である。代表的な事例としてはフェイスブック(Facebook)やミクシィ(mixi)、ツイッター(Twitter)などが挙げられる。ソーシャルメディアは、①人と人、人と組織間のつながりの補完・補強・交流の活性化、②特定のテーマや目的・嗜好等に沿ったグルーピングの活発化、③情報流通経路・情報選別方法・情報伝達の速度・範囲・深度等について従来メディアからの変化、④多くの人々や情報が集積することによるプラットフォーム化、⑤オンラインからオフラインへの波及効果、などといった特徴を有している。近年、情報通信技術の発達や人々の帰属欲求の高まりを背景に、ソーシャルメディアの利用は急速に拡大している。


  2. ソーシャルメディアの利用者の拡大につれて、ソーシャルメディアの社会や経済に及ぼす影響力も増大している。経済面では、とくに人々の情報摂取、購買行動、消費性向等に与える影響が注目されるようになっている。そこで、企業においては、①告知メディア、②傾聴メディア、③対話メディア、④コミュニティメディアといったソーシャルメディアの有する機能を組み合わせて、ビジネスに活用する動きが出てきている。アメリカでは、フォーチュン500にリストアップされている大企業の6割がソーシャルメディアを利用しているとの調査結果もある。一方、わが国においては、将来の発展の可能性に対する期待はあるものの、現段階では様子見とする企業が多い。


  3. 企業におけるソーシャルメディアの活用が広がりつつあるが、金融業界における取り組みは欧米でもまだ黎明期にある。ヨーロッパの業界団体の調査によれば、金融機関の6割が初心者や未経験者の域を出ていないと答えている。もっとも、欧米の大手金融機関のなかにはすでにソーシャルメディアを自らの経営戦略に組み入れるところが出てきている。また、ソーシャル・プラットフォームを運営する事業者による大規模な顧客基盤を生かした金融サービスや、人々や情報が集積するプラットフォームとしての特性を利用した新たな金融サービスなど、既存金融機関以外の事業者による新たなビジネスモデルが登場しており、今後、金融ビジネスに影響を及ぼすものと考えられる。


  4. これまで、コンピュータ・ネットワークやインターネット、携帯電話など情報通信分野の技術革新は、金融サービスの提供チャネルや提供主体、あるいは金融業務や金融サービスに変革をもたらしてきた。ソーシャルメディアは、こうした金融業務の電子化やインターネット金融の登場以上のインパクトを金融業界に与える可能性もある。①ソーシャルメディアの利用環境の整備に伴う世界的な普及の加速化、ならびに②グローバルかつ大規模な顧客基盤をベースとしたビジネス展開の既存業界への影響が指摘でき、ソーシャルメディアの台頭に伴い、情報流や商流が変化するとともに、それに付随する金流も変化の兆候が出てきている。すでに、金融機関をバイパスする決済サービス・送金サービスやP to P金融サービスが登場している。


  5. こうした状況下、金融機関においても、従来のインターネット戦略をソーシャルメディア時代に相応しいものへと転換していく必要があろう。わが国金融機関においては、以下のような取り組みが有用と考えられる。
    第1に、リレーションシップバンキングのさらなる強化の観点からのソーシャルメディアへの取り組みが挙げられる。第2点目として、業務イノベーションの観点からの取り組み、具体的には企業のナレッジマネジメントへの活用である。第3点目として、ソーシャルメディアを基盤とした他業種事業者との連携による新たなビジネスの開拓が指摘できる。
    なお、こうした取り組みを進めるにあたっては、事前に、金融規制やコンプライアンス、情報セキュリティ、個人情報保護などについて十分に検討し、社内体制を整備する必要があることはいうまでもない。
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