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Business & Economic Review 2011年8月号

【特集 震災復興に向けて】
復興にかかる財政規模とその財源

2011年07月25日 蜂屋勝弘


要約

  1. 東日本大震災の被災地復興にあたっては、総額40兆円近い事業費が必要との見方があるものの、現時点で震災復興に向けた「復興計画」の全体像が明確になっているわけではなく、そうした金額の妥当性の判断は不可能というのが実状である。そこで、本稿では、前提となる復興事業費についての考え方を、阪神・淡路大震災復興事業の経験を踏まえて改めて整理したうえで、復興にかかる財政規模とその財源について考察する。


  2. 復興事業費の規模の見当をつけるにあたっては、阪神・淡路大震災の経験が参考になるものの、①「阪神・淡路」の復興事業が「復旧」事業と「復興」事業をそれぞれどの程度含んでいたのか不明、②復興事業費には、国・地方などの公的負担のほか民間負担も含まれている、③被災した資本ストックの再建費用だけでなく、保健・医療・福祉など生活サポートの費用も含まれている、④復興事業費は最初の実質2年間に5割、後の8年間に5割が支出されている、といった点に注意が必要である。


  3. 「復興計画」の詳細な具体的内容が策定されるには相応の時間がかかることから、とりあえずの事業規模として、①毀損した資本ストック額に相当する額の資本整備、および②阪神・淡路大震災の復興事業と同程度の生活サポートのために必要となる公的負担を試算すると、合計で14兆~18兆円程度となる。これがさしあたり2次補正編成において前提とすべき数字であるが、復興事業の内容を十分に吟味・精査した結果、追加的に財政負担すべきものが出てくれば、追加の財源について、それが明確になった段階で調達する必要がある。


  4. 復興事業は、①緊急的、②時限的、③地域的であり、財源選択の際にはこうした点を考慮に入れる必要がある。財源確保のために、まずは不要不急の歳出の見直しが求められるものの、復興事業が緊急を要すること、それに伴う財政需要が2011年度に集中すること等を勘案すると、公債の増発もやむを得ない。ただし、同時に元利償還に必要な財源を10年程度で回収できる方策を提示する必要がある。増税する場合には、制度変更の機動性や社会保障改革の財源論議とのかかわりを勘案すると、所得税や法人税が適していると考えられる。


  5. 本レポートでは、東日本大震災の復興事業費の規模とその財源について検討するが、もともとわが国財政は、①高齢化に伴う社会保障費増大に対する財源手当、②マニフェスト実行のための財源手当といった財源問題を抱えており、これらの問題については、大震災によるわが国経済への影響等を踏まえたうえで、引き続き解決に向けた取り組みが求められる。
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