コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

オピニオン

自動車部品メーカーは環境・エネルギー産業で飛躍を

2011年05月10日 金城秀樹


自動車関連産業はその高い国際競争力で日本の経済成長を牽引してきた。しかし、グローバル経済が持つ不確実性による不況は、自動車メーカーを頂点とした裾野の広い産業全体に大きな影響を与えた。特に3次、4次部品といった裾野では強いあおりを受け、多くの技能・技術が失われた。自動車関連産業、ひいては日本にとっての損失である。

確かに、これらの部品メーカーは、自動車産業に依存せざるを得ない。しかし、今、日本は様々な基幹産業を戦略的に育成しようとしている。成長が期待される環境・エネルギー産業に目を向ければ、部品メーカーが飛躍する機会はあるのではないか。

例えば、再生可能エネルギーとして注目されている風力発電は自動車関連産業の技術と親和性が高い。風車は、精密加工が必要な歯車や軸受け、発電機や電力変換装置など多数の部品からなる回転機械である。中でも、ベアリングや増速機に使用される歯車などの主要部品は自動車部品と重なる。風車の部品産業の裾野は自動車関連産業と共通しているのである。実際に、小型風力発電の分野では、発電機を自動車のハンドルが軽く回せるパワーステアリング部品の技術を持つメーカーから調達するなどの例もある。自動車用部品から風力発電用部品への生産ラインの切り替えには支障が少ない場合が多い。そのため、部品によっては、生産ラインの空き時間を利用して、風車部品生産に切り替える兼業という形態もとることができる。
部品単位での受注を重ね風力専門の技術力を吸収した次の段階として、小型風力発電装置の完成品分野への参入の可能性もあり得る。小型風力発電はおおむね100kW以下の容量が目安であるが、小規模の資本でも参入の余地がある。さらには、小型風力発電機の製造・販売で実績を重ね、段階的に大型化を進めることも可能である。完成品メーカーであれば、企画、研究、開発から製造・販売まで、一貫したマーケティング思想に基づき付加価値の高い製品づくりに取り組むことができ、これまでの下請けに比べ差別性を発揮することが可能となる。さらには、風力発電と太陽光発電の小規模ハイブリッド発電や、LED照明を組み合わせた街路灯など製品展開も可能である。

環境・エネルギー分野は、政府の補助金や規制の変化により産業自体の持続性が大きく左右されるリスクがある。さらには、大企業が関係技術を独占しているという現状もある。一方で、大企業が手掛けることができない、多くのニッチ市場を作ると思われる。環境・エネルギー産業が自動車部品メーカーにとって飛躍の場となることを期待する。


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ