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Business & Economic Review 2011年2月号

【特集 グリーン・グロース実現への道】
スマートグリッドで進化するコミュニティ

2011年01月25日 瀧口信一郎


要約

  1. 日本のスマートコミュニティをはじめ、スマートシティ、エコシティといった名前で世界的に地域のスマートグリッドを普及させる取り組みが盛んである。スマートグリッドを、現状フォーカスされている技術的側面だけでなく、地域にもたらす意味を社会や住民の視点で捉えなおすことが必要である。


  2. 今、日本は中央集権型の社会システムが機能不全に陥っている側面があり、地域で意思決定できる自由度をもって、分断された地域のつながりを取り戻し、自律分散協調型の社会システムに構造転換することが、活力ある地域社会を取り戻すために重要と考える。


  3. エネルギー事業を通じて地域のつながりが生み出された例は、過去にも北海道での地域熱供給事業や長野県での省エネ活動などにみられる。スマートグリッドの情報通信技術を通じて、地域における意思決定に自由度が生まれ、地域内での協調が容易になることにより、自律分散協調型のエネルギーシステムが確立していき、コミュニティのつながりが強化されることを期待する。北九州市では、コミュニティでエネルギーのピーク需要をコントロールし、エネルギーの融通を行う地域のエネルギーマネジメントを通じて、コミュニティのつながりを生み出す取り組みが始まっている。


  4. コミュニティ単位で意思決定をおこなうコミュニティマネジメント会社が、コミュニティの形成と協調により地域最適化を目指すエネルギーマネジメントを、整合性をもって運営することが今後の一つのアプローチとなる。このコミュニティマネジメント会社の方法論が確立すれば、今後成長する新興国におけるスマートグリッド展開で日本の強みになる。このコミュニティマネジメント会社は、住宅地の開発を行い、開発後の管理運営も手がける住宅メーカーやデベロッパー、エネルギーなどインフラ事業を手がける公益的な企業が一つの候補となる。地域における高圧一括受電といったエリアを限定した電気事業スキームを用いて、実現を図る姿が想定される。


  5. 本来的には、電力系統における自律分散協調型のスマートグリッドの実現が必要であり、エリアを限定せず、地域の需要家を仮想的に束ねてコミュニティを形成する形態を取れることが好ましい。しかしながら、現状の電気事業法の考え方とそぐわない面もあり、高いハードルが予想される。将来的には、電気事業法を自律分散協調のコンセプトで見直すことが必要であると考える。
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