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平成22年度「今後の社会資本ストックの戦略的維持管理等に関する調査」結果 ~企画財政編~
~全国の9割以上の自治体で社会資本ストックの維持管理が今後10年以内に財政上困難に
特に道路や水道等で効果的・効率的手法の導入が急務~

2010年11月08日

各位

株式会社日本総合研究所

●全国の7割以上の自治体で、社会資本ストックの更新・維持管理が財政上の課題として既に顕在化。また、10年以内に顕在化する見込みも含めると9割超に上る。
●社会的インフラ(学校、病院、文化施設など)では指定管理者制度等の導入が進む一方、民間委託への規制が存在する経済的インフラ(道路、上水道・下水道など)では未着手。
●PFI/PPP活用の大きな障害は、経験や知識の不足および受け皿となる民間事業者の不在。また、経済的インフラでは関連法の整備も必要。

株式会社日本総合研究所(代表取締役社長:木本泰行 本社:東京都千代田区)は、今後の社会資本ストックの戦略的維持管理等に関し、全国の市以上の地方自治体856団体の企画財政部門を対象としたアンケート調査を2010年7月~8月に実施しました。

わが国の社会資本の多くは高度成長期に整備されたため、これから一斉に更新時期を迎えます。しかし、公共施設や道路をはじめとするインフラは、計画的に新規建設が進められてきた一方で、建設後については必ずしも計画的な維持管理が行われてきたとはいえません。また、近年は自治体の財政難により、本来は増えていかざるを得ない維持管理経費が、むしろ削減される傾向にあります。既に全国の自治体の管理する社会資本の中には、財政難のために適切な維持管理がされていない、危険な状態にあるものも多いと推測されます。

6月に閣議決定された「新成長戦略~『元気な日本』復活のシナリオ~」でも、「国・地方の財政状況の逼迫等により、社会資本ストックが更新できなくなるおそれがある」という問題意識から、社会資本ストックの戦略的維持管理等の必要性を指摘しています。さらに、「厳しい財政事情の中で、維持管理のみならず新設も効果的・効率的に進めるため、PFI、PPP の積極的な活用を図る」と踏み込んだ見解も示しています。

弊社では、全国の地方自治体において、どのような社会資本ストックの維持管理が財政的課題なのか、また「新成長戦略」で指摘されるような戦略的維持管理がどの程度取り組まれているのか等について明らかにするために、全庁的な状況を掌握する立場と考えられる企画財政部門に対してアンケート調査を実施しました。調査項目は、社会資本ストックの更新・維持管理の財政上での課題や効果的・効率的な更新・維持管理手法の取り組み状況や課題、国への要望事項などについてです。

※ 本調査と同時に、自治体の道路管理部門および水道事業者をそれぞれ対象とした、インフラの維持管理の現状や課題、PPP手法の導入意向などに関するアンケート調査を実施しており、「道路編」は10月7日、「上水道編」は10月18日に調査結果を発表しています。

アンケート概要

調査対象:全国の地方自治体の企画財政部局
(都道府県47団体、市786団体、東京都特別区23団体、計856団体)
調査期間: 2010年7月~8月
調査方法: 質問は郵送、回収はファクシミリ若しくはE-mail
回収数: 344票(回収率40.2%)
うち都道府県21団体(57.4%)、市311団体(39.6%)、東京都特別区6団体(26.1%)

アンケート結果

本調査での社会資本ストックの分類

【経済的インフラ】鉄道・バス、道路・橋梁・トンネル、空港・港湾、上水道、下水道 等
【社会的インフラ】庁舎・宿舎・警察施設・消防施設、公立学校・給食センター、病院、産業施設、福祉施設、文化施設、スポーツ施設、公園・河川、公営住宅、環境施設 等

注)上記分類は、国の成長戦略会議の福田委員資料(公開資料)を弊社にて分類したものです。

9割を超える地方自治体で、今後10年以内に社会資本ストックの更新・維持管理が財政上の課題として顕在化する見込み

  • 社会資本ストックの更新・維持管理が財政上の課題として既に顕在化していると回答した自治体は全体の73.5%に上りました。1~5年以内に顕在化する、6~10年以内に顕在化すると回答した自治体をあわせると90.7%となりました(図-1)。
  • 社会資本ストックの更新・維持管理に関する費用は、全国的に地方自治体の財政を圧迫しているのが実情であり、もはや国が主体となって地方自治体における効率化を早急に推進すべき段階に達しているといえます。

図-1財政面の課題(N=344)

対策の進んだ「公立学校」でさえ更新や維持管理が財政上の課題になっている自治体が多いことから、社会資本ストックの財政課題を短期間で解決させることが難しいのが分かる

  • 自治体の財政的課題である社会資本ストックとして第1位に挙げられた公立学校は、1995年の地震防災対策特別措置法や2007年の生活安心プロジェクト等において、早急に耐震化を図ることとされ、既に国から相当の支援を受けています。それにもかかわらず、未だ地方自治体において大きな財政課題となっています。
  • また、公立学校以外でも、全国でPFIや指定管理者制度の導入実績が多い社会的インフラ(庁舎、環境施設、文化施設、公営住宅など)は、本来、一定の財政的課題は解決しているはずですが、実際にはまだ財政的課題として認識されている状況です。
  • これらから、社会資本ストックに関する財政課題は、短期間での解決が難しいことが分かります。

図-2 財政的課題となっている社会資本ストック/ポイント化(MA)

学校、病院、文化施設などの社会的インフラでは指定管理者制度等の効果的・効率的手法の導入が進む一方、民間委託への規制が存在する経済的インフラ(道路、上水道・下水道など)では未着手

  • 図-3は、社会資本ストックの更新・維持管理が財政的課題と回答した地方自治体が、既に取り組んでいる民間委託の内容です。総じて、道路、上水道、下水道などの経済的インフラでの取り組みの遅れが目立ちます。
  • これは、経済的インフラに適用される、関連法での民間委託の制限(※)などが影響していると推測されます。

※「公共施設等の整備等において民間事業者の行い得る業務範囲」について(内閣府民間資金等活用事業推進室、平成16年6月)

図-3 効果的・効率的手法の取り組み度数

経済的インフラ(道路、上水道・下水道など)の更新や維持管理にPPP手法を推進するには、地方自治体自身の「ノウハウの蓄積」と「受け皿となる民間事業者の存在」が不可欠

  • 経済的インフラの更新・維持管理において、今後PFI、PPPの活用を推進するために必要なものとして、第1位に「庁内ノウハウの蓄積」、第3位に「国などが示す詳細なガイドライン」が挙げられており、経験や知識の不足が大きな課題であることが分かります(図-4)。
  • また、「受け皿となる民間事業者の存在」の必要性を求める声も70%超で第2位となっており、そもそもどこに依頼すべきかさえ分からない状況です。

図-4 新成長戦略推進の課題(経済的インフラ)(MA)(N=344)

アンケート結果に対する弊社の考え

  • 社会資本ストックの更新や維持管理は、既に地方自治体において財政上の問題となっており、適切な実行が困難になりつつあります。財政面、機能面および安全面等において、喫緊の対応が求められる状況です。
  • 公立学校等は、阪神・淡路大震災を契機として1995年に施行された地震防災対策特別措置法や生活安心プロジェクト(2007年)等によって国の補助が充実し施設更新(主として耐震化)が進みました。また、その他の社会的インフラでは、これまで指定管理者制度の導入やPFIでの整備などのPPPの取り組みにより効率的・効果的な更新・維持管理が行われてきました。しかし、それでもまだ公立学校を含め社会的インフラは、多くの自治体において大きな財政課題となっています。
  • 経済的インフラは、社会的インフラ以上に取り組みが大きく遅れている状況といえます。これは道路や上・下水道では関連法等の規制によって、「維持・管理・運営」業務に民間ノウハウを活用しにくい状況にあることが大きく影響していると考えられます。
  • 経済的インフラよりも対策が進んでいる社会的インフラでさえ、未だに大きな財政課題とされていることから、社会資本ストックの更新や維持管理の対策が効果を発揮するまでには非常に長い時間を要するといえるでしょう。経済的インフラの中でも、特に道路に関してはその課題認識の大きさに比べ、現時点ではほとんどの自治体で具体的な取り組みが行われておらず、今後の最重要分野であると認識します。
  • 一方、PPPの取り組みには庁内に一定のノウハウが必要になるため、ガイドラインの提供等、地方自治体におけるノウハウ蓄積に資する支援策の実施が望まれていると考えます。
  • 受け皿となる民間事業者の存在に対する心配は、多様な産業集積に乏しい地方部では特に深刻であると考えられます。そこで、PPPビジネスの広域化や集約化を図ることで民間ビジネスとして成立させる政策など、民間企業参入促進の対策も重要です。
  • PFI/PPPを活用することで、国の新成長戦略を早期に展開するためには、検討・実施すべき事項が数多く存在することが本調査を通じて分かりました。特に取り組みが遅れている経済的インフラの運営に民間事業者を携われるようにするための関連法の改正をはじめ、実施前検討段階での財政支援、更新や維持管理に関する補助金制度の再構築、庁内ノウハウ不足を補う各種の情報提供など、国の担うべき役割は極めて広範に存在するものと考えられます。

ご案内

本調査結果等を踏まえて、以下のシンポジウムを開催します。

(東京地区)

2010年11月11日(木)
「社会基盤イノベーションシンポジウム 次世代の社会基盤の姿~成長戦略を超えて~」(日経カンファレンスルーム)

(大阪地区)

2010年11月17日(水)
「社会基盤イノベーションシンポジウム 次世代の社会基盤の姿~関西・大阪の成長戦略実現に向けて~」(ブリーゼプラザ・小ホール)

また、日本総合研究所では、水道分野のPPP研究会(水道事業者や民間事業者等と連携して、水道事業を対象とした具体的なPPPスキームのあり方/包括委託・コンセッションなど、官民の役割分担などに関する研究)を今秋に、道路分野の同様なPPP研究会を今冬から開始する予定です。

調査の概要につきましては、別添資料「平成22年度『今後の社会ストックの戦略的維持管理等に関する調査』~地方自治体企画財政部局編~」をご参照ください。

日本総合研究所について

株式会社日本総合研究所は、三井住友フィナンシャルグループのグループIT企業であり、情報システム・コンサルティング・シンクタンクの3機能により顧客価値創造を目指す「知識エンジニアリング企業」です。システムの企画・構築、アウトソーシングサービスの提供に加え、内外経済の調査分析・政策提言等の発信、経営戦略・行政改革等のコンサルティング活動、新たな事業の創出を行うインキュベーション活動など、多岐にわたる企業活動を展開しております。

本件に関するお問い合わせ先

総合研究部門 東(あずま)
E-mail:200010-info@ml.jri.co.jp
TEL:06-6479-5588 FAX:06-6479-5531

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