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わが国農業の再生に向けて
~大量離農を好機と捉えたコメ政策の転換を~

2010年11月05日

【要 約】

1.販売農家の85%が携わるコメ生産の構造問題の解決は、FTAやTPPの締結を早めてわが国の貿易立国としての基盤を強化するのみならず、衰退に向かいつつある米作を再生させ、農業を成長産業化するためにも、きわめて重要な課題。

2.コメ生産は、長期にわたる価格維持政策下、「作付面積規模の小さな兼業農家」が大半を占める業界構造のもとで、生産性の低い状態が存置されてきた。しかしながら、高齢化の進展により大量離農の可能性があり、しかも地方の経済活力低下による雇用吸収力の低迷から生じる兼業先不足により、今後兼業体制の維持が難しくなって行くことが予想される。作付面積規模の小さな農家の大量離農は、わが国農業の存亡の危機である半面、これまできわめて緩やかにしか進まなかった農地集約を進め、農業の生産性を高めるための絶好の機会と考えることが可能。

3.近年、作付面積規模が大きい農家では、生産コストの低下が顕著。しかも、今後国際市場において、コメの価格の上昇が予想される。戸別所得補償制度の助けもあり、大規模な農家によるコメの生産コストは、10年以内に国際価格と同水準となり、国際競争力を備える可能性がある(標準ケース)。 一方、コメの需要と供給のギャップは、拡大傾向にある。一人当たりの需要の減少と生産量の維持が続けば、2020年の需給ギャップは240万トンに及ぶ。極端なコメ余りを生じさせないために、需要水準維持に向けた政策導入が不可欠。

4.作付面積の小さな農家の大量離農を農地集約の好機と捉え、農地を生産性の高い大規模な農家に集約するとともに、米価を引き下げ、国際競争力に配慮した農家支援策の導入が求められる。

①一定の関税維持の戦略
戸別所得補償制度を0.5ha以上の作付面積の農家に限定した定額直接支払いにするとともに、農地集約に向け、農地借り受け支援金制度を創設。特に、借り手として資本力のある法人の参入を支援し、小規模な米作農家から農地を借り受け、より収益性の高い作物・形態への転作を促す。同時に、意欲的な生産者の育成、中山間地域対策などとともに、輸出や消費拡大を目指した需要拡大策を導入。 標準ケースのもと、一連の政策導入により、現行341円/kgの輸入関税を段階的に150円/kg程度にまで引き下げても、作付面積0.5ha以上の農家の国際的な競争力の維持は可能。その際の戸別所得補償対象農家の生産量は700万トン、その他の生産や輸入等を合わせ国内総供給量は930万トンとなり、輸出80万トンで需給をバランスさせることが可能となる。

②TPP等更なる関税引き下げ
標準ケースにおいて、 TPPに参加するなど、コメの関税障壁を撤廃する戦略をとった場合でも、一定規模以上の農家に絞り込んで戸別所得補償を行うことで、わが国コメ生産の国際競争力を維持することは可能。コメの国内生産水準を十分議論したうえで、TPPなどの交渉に臨むことが必要。合わせて余剰水田については、一層の担い手育成、法人の参入促進などにより、収益性の高い作物・形態への転作を促す。

5.専業でも一定の収入が得られるわが国農業の体質強化と、農地の流動性改善による農地取得の容易化は、産業としての農業の持続性向上のために不可欠な取り組みであるとともに、地方再生の面からの意義も大きい。個々の農家の生産性を高め、食える農家の育成に注力することが、雇用機会の少ない地方における地域再生に向けた第一歩となる。

本件に関するお問い合わせ先

調査部 藤波
TEL : 03-3288-5331

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