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Business & Economic Review 2010年7月号

【特集 京都議定書削減目標と環境ビジネス】
新たな官民連携で地域密着型温暖化対策を

2010年06月25日 石田直美


要約

  1. 日本の温室効果ガス削減には、再生可能エネルギーの大量導入や自動車に依存した交通システムの見直しが避けて通れない。そのためには、小規模かつ低採算という事業特性を踏まえ、事業の状況に即して官民の長所を出し合うことのできる官民連携(PPP)スキームの導入が有力な方策となる。


  2. 日本では1999年のPFI推進法施行が民間の技術力、経営力、ノウハウを取り入れる本格的な官民連携の幕開けとなった。PFIは年間3,000億円規模のマーケットに成長し、公共サービス全般の改革を促進する等の成果もあった一方で、小規模事業への適用が困難、民間の自由度が低い、官民の対立構造を生みやすい等の限界も生じている。


  3. PFIを生み出したイギリスでは、サッチャー政権下の民営化に始まり、民営化できない事業を対象に業務を民間にゆだねるアウトソーシング、新たな投資を対象に民間に資金調達をゆだねるPFI、事業リスクを官民で分担するパートナリングと進められてきた。さらに2000年代からは、中学校等の小規模事業に対して、官民がパートナーシップ契約により共同出資会社を設立し、複数の小規模事業の計画から実施までを担うBSFやLIFTというスキームも実施されている。


  4. イギリスでは、境界条件が明確なPFIからスタートし、責任ある官民連携の在り方を学んだうえで、発展性のある柔軟な枠組みへと発展してきた。これに対し、日本では責任ある官民連携を学ばずに第三セクターという柔軟なスキームからスタートし、失敗を重ね、官民連携へのトラウマを積み上げた。しかし、PFI導入から10年を経て、わが国の官民も経験を十分に蓄積してきた。今こそ大きな傷跡を残した第三セクターの呪縛を払拭し、真の官民協調に踏み出すときである。


  5. 小規模で分散する再生可能エネルギー事業や低炭素型の交通事業を官民連携で実現するには、BSFやLIFTと同様のスキームが有効であるが、これを実現するためには第三セクターに対する過剰な拒否反応を取り除く等の取り組みが必要である。低炭素なインフラ・都市への転換はいまや世界の潮流である。官民が持てる知見を尽くして取り組むことができる新しい枠組み構築が求められている。
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