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Business & Economic Review 2010年5月号

【特集 存在感を増す新興国経済】
成長持続の中身が問われる中国経済

2010年04月23日 佐野淳也


要約

  1. 2009年1~3月期を底として、中国経済は上向いている。2009年通年では、政府が設定した「保八」、すなわち8%前後の成長目標を達成した。急回復の原動力は投資である。消費も、年初を除けば堅調な増勢を保った。輸出は成長の押し下げ要因となっていたが、直近では回復傾向を強めている。


  2. 2009年12月開催の中央経済工作会議から、2010年の経済運営方針の柱として、①経済発展(成長)方式の転換促進と成長持続の一体的な取り組み、②成長持続を優先した財政・金融政策の継続という2点を指摘できる。2010年3月の「政府活動報告」でも、この方針は基本的に堅持されているが、成長方式の転換に関する具体的な構想、インフレや不動産価格の高騰に対する警戒感は、若干強く示されている。


  3. 2009年末以降、生産過剰業種や不動産に対する引き締め強化の動きがみられる。ただし、胡錦濤政権は成長持続の優先という経済運営面における基本方針を転換してでも、投資の抑制を断行していくことまでは考えていないと判断される。消費刺激措置の継続および拡充検討、将来の成長産業に対する支援強化の動きがその根拠としてあげられる。


  4. 2009年後半以降の重要会議での決定や取り組みなどから類推すると、政府としては、2010年1~3月期のGDP成長率や物価などに応じて引き締めを強化するとみられるものの、個々の措置の「微調整」にとどめ、成長持続優先の基本方針を堅持しようとする可能性が高い。


  5. 中国経済が一定水準の成長を持続しつつ、成長方式の転換を目指すうえでの主な課題は、①インフレ懸念および不動産価格高騰への適切な対処、②地方政府との政策協調、③消費の持続的かつ自律的な拡大の三点である。いずれも、長期に亘る成長持続に向けて取り組まなければならない難題である。
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