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Business & Economic Review 2010年3月号

【REPORT】
成長戦略と絡めたGHG25%削減への取り組みを

2010年02月25日 松井英章


要約

  1. COP15は不調に終わったものの、日本はGHG25%削減という目標を維持するだろう。GHG25%削減の方策を巡り、中期目標検討委員会や地球温暖化問題に関する閣僚委員会におけるタスクフォースなどで議論されたが、議論の中心は削減活動に向けた負担を如何に小さくするかであり、成長の鍵と捉える論調は前面に出ていない。
  2. しかしながら、低炭素化は今後のゆるぎない基調であり、未来的視点をもって世界に先駆けて取り組むことで、世界市場における日本の産業のシェアを高めていくことが出来る。単にGHGを削減するための負担ではなく、世界の低炭素市場のシェアを獲得するための投資と考えることが大切である。
  3. GHG削減を成長戦略と絡めるうえで重要なポイントは、2050年削減目標とのリンク、対外政策との兼ね合い、排出削減に対するインセンティブの創出の仕方、の3点である。
  4. 2050年削減目標を考慮すれば、エネルギー効率を高めることはもちろんであるが、圧倒的なエネルギー源の低炭素化を進めなければならない。その方向に寄与する活動を推進していくことが大切である。その中心は再生可能エネルギーの導入拡大となるが、それには、大規模集中型の再エネと、小規模分散型の再エネの二つの方向があり、日本は市場シェア獲得のため、両方向目指さなければならない。
  5. 大規模集中型の再エネについては、日本国内で展開することが難しいため、海外、とくに低炭素関連技術の市場拡大が見込まれ土地も広い中国での展開が求められる。ただし、中国国内でもすでに再エネ関連メーカーは育っており、共にノウハウを開発し、日中共同で世界市場獲得を目指す姿勢が必要であり、それを可能とするような外交的努力も求められる。
  6. 小規模分散型の再エネについては、日本国内で住宅や建築物等への製品組み込み型の再エネの展開が可能である。日本は技術的優位性を保有しており、再エネ設備メーカーと組み込む側の製品のメーカーが連携し、日本国内で開発・普及させた実績を基にセットで世界展開していくべきである。再エネ設備メーカーについては、海外の地元の製品メーカーとの連携もあり得るだろう。
  7. これらの活動を誘導するには、インセンティブを創出する必要がある。そのためには、排出量キャップ設定やRPSなどの規制的措置に加えて、CO2の削減に資する製品/サービスの開発・販売を行えば行うほど経営メリットになるような促進策を設けることが大切である。例えば、CO2排出量のキャップについて、企業としてのCO2排出量だけを考慮するのではなく、その企業の製品/サービスの開発・販売による社会でのCO2削減の貢献分を一部差し引くなど、低炭素技術・製品/サービスの提供という本業を通じた削減行為を認めることで、国内企業の低炭素技術開発のインセンティブを高めることができるだろう。
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