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Business & Economic Review 1999年07月号

【論文】
地方自治体における人材育成と研修体制のあり方

1999年06月25日 調査部 高坂晶子


要約

国から地方への権限移譲が実行段階に入った現在、地方自治体は業務環境の変化に対応しうる職員像を独自に描き、その育成を急ぐ必要がある。

生活密着型の行政サービスに対する需要が増大するのに伴い、自治体職員に求められる資質・能力は多様化、高度化している。すなわち、地方分権計画が具体化すれば、自治体職員には政策形成能力や法務能力、説明責任充足能力など従来とは異なるタイプの資質が求められる。

職員に求められる資質が多様化する一方、自治体の人事環境には、地方財政の悪化に伴う厳しい定員管理、職員の高齢化によるいびつな年齢構成といった制約要因が存在する。もっとも、国が従来、自治体に課してきた厳しい人員配置規制(必置規制)は、分権計画の下で緩和され、自治体の自己組織権が拡充される予定である。自治体は規制緩和に積極的に対応し、地域経営に必要な人材や資質を洗い出したうえ、職員の人材開発と柔軟な配置・活用を行い、人事環境の制約を克服することが求められる。

現行の自治体職員の研修体制をみると、(1)研修と日常業務のリンケージが弱い、(2)教材から研修内容に至るまで全面的に外部機関に依存し、主体的な人材開発を進める姿勢に乏しい、(3)長期的な人材育成方針が確立されていない、などの問題点がある。とりわけ、小規模自治体では、職員や財政上の余裕が乏しいため、研修施設や実施体制に問題がある場合が多い。

地方主権時代にふさわしい職員を育成するには、現行の研修体制を見直し、多様で専門性の高い人材開発を進める必要がある。すなわち、(1)開かれた議論に基づく総合的な人材活用方針の策定、(2)高度な専門能力を養成する派遣研修の充実、(3)職員全体の政策形成能力を高めるための実践・現場主体の研修体制の確立、(4)外部の人材を活用した職員の意識改革、(5)講座の提供にとどまらず、広範な調整役割を担う研修機関の設置、(6)小規模自治体の手薄な研修体制を支援する広域的なネットワークの導入、等の施策が有効である。

自治体職員の生産性向上と効率的な自治体経営を実現するには、以上のような研修体制の充実に加えて、業績重視型の人事管理手法を採用し、自治体職員が自発的に能力開発に取り組むインセンティブを喚起する体制を、早急に整備することが喫緊の課題である。
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