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Business & Economic Review 1999年04月号

【論文】
地方自治体における住民統制システムの改革

1999年03月25日 調査部 高坂晶子


要約

行政統制とは、「主権者が行政組織に職務・権限を委任するに当たり、その組織に責任を取らせる仕組み」である。わが国地方自治体における行政統制の特質として、(1)「官」による内在的統制が大きな比重を占める、(2)政党・議員による統制は比較的弱い、(3)地域住民による統制(以下、住民統制)は機能・対象とも多岐にわたる、の3点が挙げられる。

近年、地方自治体の運営に関する統制主体のうち、地域住民の存在感が増している。その理由として、「官」による統制チャネルが機能不全を起こす一方、地方分権に伴い、住民が自らの責任で地域の政策決定に関与しつつある動きを指摘できる。背景には、NPOの活発化など、住民の公的活動に対する参加意識の向上も働いている。

住民統制は、住民の意思を政策形成に反映させる事前的統制(選挙、条例制定請求等)と、行政活動の不正や不適切な行為に対する事後的監視(監査請求、リコール等)からなる。住民統制が効果をあげるには、住民の統制チャネルへのアクセスを確保し、行政機関が住民に明確に応答する体制を整え、住民の意思が自治体の政策形成に反映されるための仕組みを整備する必要がある。

しかし、わが国住民統制の実態をみると、チャネルを活用するためのハードルが高い、住民意思が政策形成過程に反映される保障がない、行政機関に対する住民の影響力が弱い、住民と行政機関のコミュニケーションが悪い、等の問題を抱えている。

このような問題を解消するため、行政機関の応答手続の具体化、直接請求等の発議要件の緩和、首長はじめ行政機関に対する問責体制の強化、住民団体と行政機関との連携・協力関係の強化、等を実行に移し、統制チャネルを強化・拡大する必要がある。

住民統制の各チャネルには一長一短があり、対象や問題、目的に応じて、様々なチャネルを使い分けたり、組み合わせて活用することが不可欠である。また、住民統制の強化のみでは不十分で、他の統制チャネルとの連携、協力体制も必要である。具体的には、機能低下の著しい、議会(立法的統制)や司法機関(司法的統制)が本来の機能を発揮し、住民統制と一体となって行政への統制力をレベルアップすることが強く求められる。
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