コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

Business & Economic Review 2000年05月号

【論文】
望まれる地方議会改革

2000年04月25日 調査部 副主任研究員 高坂晶子


要約

2000年4月から地方分権一括法が施行され、自己決定、自己責任の「地方主権」時代が本格化する。これに伴い、地域住民を代表する地方議会の役割は飛躍的に高まる。

しかしながら、地方議会の形骸化が指摘されて久しく、(1)首長に対する誤った与野党意識、(2)地域の実態を反映しない議会の代表機能不全、(3)政策・立案能力の不足、(4)不透明な議会内の慣行と運営、等の問題が存在する。そのうえ、(1)地方分権に伴う権限拡大、(2)行政改革に伴う議員定数の削減、(3)議会の意思決定と住民意識の乖離(例:住民投票)等、地方議会を取り巻く環境には大きな変化が生じており、地方議会の抜本的改革は不可避である。

過去の地方議会改革の動きをみると、公的組織のスリム化、合理化を求める土光臨調路線の下、もっぱら議員定数の削減に焦点が当てられてきた。改革論議が低調に終始した背景には、地域住民を代表する議会の自主性に対する尊重や、議会活動に対する評価の困難性といった問題があった。しかし、90年代半ば、地方分権推進委員会が設置され、二次勧告において、地方議会を強化する必要性が謳われ、98年には、関係3団体(都道府県議会議長会、市議会議長会、町村議会議長会)から改革案が出された。しかしながら、これらに対する反響は一部にとどまっており、議論の広がりと深化が求められている。

議会改革を考える基本的な方向として、(1)望ましい議会のあり方について地域社会で理想像を共有する、(2)議会の自発性を引き出す仕組みを構築する、(3)地方議会ならでは果たせない役割を見い出し、議会のアイデンティティを確立する、の3点が重要である。

地域の他の主体との関係に着目して改革の具体案を整理すると、(1)住民にとって利便性の高い情報公開の実現、(2)地域住民の有する貴重な外部資源の活用による議会と住民の協働関係の構築、(3)首長との論戦の充実、(4)議員の権限強化と議会内の不透明な慣行の廃止、(5)議会事務局の強化と議員の政策立案能力の向上、等の措置が望まれる。

地方議会の置かれた状況をみると、制度的な問題もさることながら、関係者の意識に由来する問題が多い。さらに、議会の自主性に対する配慮、および議会活動に対する評価の困難さという改革のネックについて、完璧な解決は困難であり、直裁で即効性のある改善策を見い出すことは難しい。その点、行政評価やNPM(New public management)など、先進事例の紹介と導入が盛んな行政機関改革に比べ見劣りがする。地方議会の場合、間接的で漸進的な施策をきめ細かく積み重ね、徐々に改革を進めるしかなく、議員自身のみならず、首長や地域住民は、このような迂遠な道のりに耐えて、息の長い努力を弛みなく続ける姿勢が強く求められる。
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ