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Business & Economic Review 2001年11月号

【POLICY PROPOSALS】
求められる地方交付税制度の抜本改革-自立と自己責任に基づく地方自治の確立に向けて

2001年10月25日 蜂屋勝弘、古澤優子


要約

財政再建の一環として、地方交付税の見直し論議が活発化している。2002年度予算の編成過程においては、国債発行を30 兆円以下に抑制するという政策目標のもと、地方交付税の削減論議が俎上に上っている。しかしながら、地方交付税制度の見直しにあたっては、単に国の財政再建の観点からではなく、一国の財政システム全体を視野に入れた議論が不可欠である。

地方交付税は地方財政の主要な歳入項目であるばかりでなく、地方財源の保障と地域間格差の是正を通じて、ナショナル・ミニマムの保障、行政サービスの地域間格差の是正といった極めて重要な役割を果たしている。
しかしながら、現行の地方交付税制度は、(1)地方交付税自体の財源不足、(2)行きすぎた地域間再配分、(3)地方債の元利償還費の補填によるモラルハザードの助長、(4)税収確保のインセンティブを殺ぐ、(5)歳出削減のインセンティブを高めない、といった問題点を抱えている。

地方交付税改革は、今後10年程度の期間をかけて、(1)国の財政構造改革、(2)地方の財政構造改革、(3)地方交付税制度の改革、を三位一体で行うべきである。国の財政構造改革のポイントは、(1)プライマリー均衡の達成、(2)一般歳出の10兆円規模の削減、(3)地方交付税交付金のスリム化、の3点である。 一方、地方の財政構造改革では、スリム化された国庫支出金と地方交付税に見合った歳出構造の再構築を目指す必要がある。具体的には、公共事業の見直しや行政コストの引き下げを通じて、普通会計の歳出規模を13.5兆円程度削減する。
さらに、地方交付税制度改革のポイントは、(1)交付税総額を国税収入の32%程度に固定、(2)財源の交付税及び譲与税配付金特別会計への直接繰り入れ、(3)基準財政需要額への投資的経費の不算入、(4)基準財政需要額への地方債元利償還金の不算入、(5)算入率の20ポイントの引き下げ、の5点である。

なお、税源移譲の是非を議論するにあたっては、現状の国と地方の歳出と税収バランスを比較するだけでは不十分である。税源移譲が必要か否かには、わが国の財政制度全体を視野に入れた議論が必要で、具体的には、地方交付税など既存の事実上の税源移譲を考慮すべきであることに加えて、現状の国と地方の歳出規模が適正か否かという議論が不可欠である。

以上の改革によって、財政の健全化、財源再配分の行き過ぎの是正、税収確保と歳出削減のインセンティブの向上、が達成される。また、高齢化社会に相応しい財政システムの構築に向けた当面の目標である、財政の持続可能性の確保は十分に達成可能と判断される。
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