コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

Business & Economic Review 2001年10月号

【REPORT】
"消費低迷"は本当か-価格下落が可能にする「選択的支出」の拡大

2001年09月25日 調査部  経済研究センター 小方尚子、石川誠


要約

個人消費は、厳しい雇用・所得環境を背景に、低迷が長期化している。もっとも、支出の中身をみると、以下の3分野では異なる動きとなっている。
(1)生活必需品としての性格が強い食料・衣料品への支出は大きく減少。
(2)生活必需サービスである家賃・医療・教育・光熱への支出は、横ばい。
(3)個性的なライフスタイルを実現するための「選択的支出」(住居設備、交通・通信、教養娯楽など)は、下げ止まりから持ち直し。

通常、生活必需品の削減は難しいため、可処分所得が伸び悩むもとでは「選択的支出」が削減される。しかし、近年の動きからは、食料・衣料品などの価格下落に乗じて、生活必需品への支出を安上がりに済ませ、その軽減分で、こだわるモノ・サービスへの「選択的支出」を増やす「消費の高度化」が進展している状況がうかがわれる。したがって、現下の“消費低迷”は、必ずしも消費者が実質生活水準を切り下げていることを意味しないと考えられる。

こうした需要サイドの動きは、供給側の各種指標にみられる「強弱混在」状況とも、整合的と考えられる。すなわち、高級ブランド品、旅行、乗用車など「選択的支出」分野の売り上げは底堅く推移する一方、チェーンストアなど生活必需品を中心に扱う業態の売り上げは低迷が持続している。ただし、生活必需品に特化した分野のなかにも、「価格低下」による売り上げ減少分を「売上数量増加」で取り返すことに成功している企業、店舗が存在する。

先行きを展望すると、企業活動の減退、増益ペース鈍化を受けた所得・雇用環境の一段の悪化が見込まれるなか、名目ベースでみた“消費低迷”は続く見通しである。こうしたなか、「生活必需品への支出を安上がりに済ませ、選択的支出は確保する」という消費者のメリハリ意識は一層強まろう。

このようにみれば、消費回復への展望を開くためには、「消費の高度化」に応じた調整を迅速に進める必要がある。まず、企業では、生活必需品分野を中心とした価格競争力強化、「選択的支出」分野での需要喚起に注力することが課題である。具体的には、
(1)IT の活用、グローバルな商品調達を通じた積極的なコストダウン
(2)製品の高機能化・高付加価値化に向けた研究開発投資への注力
(3)「選択的支出」を引き出すためのライフスタイル提案型の商品提供、IT の活用などによる顧客ニーズの発掘などが、これまで以上に重要となる。
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ