地方から電子政府を実現させる理由の第1は、なによりも、これが地域のIT需要を喚起するからである。民間事業者による高速ネットワークの整備が期待できない地域については、地方公共団体に主導的な役割を果たすことが求められているが、単にハード面を整備するだけでは不十分である。民間事業者などがインフラを構築したり、住民がネットワークを積極的に利用する「きっかけ」となる施策を実施していくことが、地方公共団体の役割として求められる。そこで、重要な鍵を握ると考えられるのが、「電子自治体」の推進である。地方公共団体が民間事業者をパートナーとして、自ら率先して電子化・ネットワーク化に取り組み、ネットワークの主たるユーザーかつサービス提供者となれば、地域のネットワーク基盤の整備や利用促進など、IT需要を喚起するであろう。例えば、電子入札や電子調達、電子決済、組織認証・個人認証などの仕組みを作れば、G to B 、G to Cといった官民間の電子商取引の基盤が構築されるだけでなく、B to B、Bto Cといった民間の電子商取引基盤の形成にも繋がる。
一つには、人材面、ノウハウ面、資金面でのサポートである。実際、各地方公共団体の首長の情報化に対する意識の差異によって、市町村間における電子化・ネットワーク化への取り組みに差が出ていることは否めない。地方公共団体における庁内LAN、パソコン、ホームページの整備状況をみると、全体としては進んではいるものの、町村レベルになるにつれ、遅れていることがみてとれる。資金面の問題を解決しなければならないのはもちろんであるが、これに加えて、情報システムやネットワーク構築に精通した人材が不足していることにも問題があると考えられる。したがって、不足する人的資源や技術面でのサポート、ノウハウの提供などが求められる。具体的には、都道府県庁にCIO(Chief Information Officer :最高情報責任者)を設置して全県レベルの情報化推進にあたらせるとともに、都道府県と市町村、ならびにネットワーク構築にかかわる民間事業者も交えた情報化連絡会議の開催、人材交流などを積極的に行っていくことで、情報やノウハウ、技術の共有を進めていく必要があろう。各市町村が個別にIT対応していくのは非効率でもあるので、複数の市町村が共同で対応していくように、都道府県主導でマッチングを行っていくことなども考えられる。