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RIM 環太平洋ビジネス情報 2000年10月No.51

体制移行における国営企業改革の特徴と課題
企業統治の視点から

2000年10月01日 さくら総合研究所 主任研究員 三浦有史


要約

ロシア・中東欧諸国で共産党政権が崩壊し、計画経済から市場経済への体制移行が始まって10年が経過した。一方、アジアでも中国、ベトナムが市場経済への移行を進めている。両者は同じ移行国でありながら、そのパフォーマンスは対照的であった。しかし、それは必ずしも、中国、ベトナムのグラデュアリズム(以下、漸進的アプローチ)という移行政策の成功を意味するものではない。両国では、移行問題はむしろ先送りされてきたといえる。

漸進的アプローチを採用した中国・ベトナムでは、競争力強化などを目的に企業集団の形成(以下、集団化)が進められている。しかし、企業集団は、企業の所有者である政府が経営者をどう監視するかという企業統治(コーポレート・ガバナンス)の問題に直面している。ベトナムでは、国営という企業形態を維持したままで、市場の独占や大幅な経営自主権を与えたことによって、その弊害が顕在化しつつある。

中国、ベトナムでは、WTOへの加盟に備え、貿易自由化に向けた取り組みが本格化しつつある。一般に、貿易自由化は構造改革を推進するとされているが、ベトナムのセメント産業にみるように企業集団では企業統治が機能しにくいため、貿易自由化が競争力強化に向けた取り組を促すインセンティブにならない可能性がある。

国営という企業形態を維持する限り、モラルの規律化など内部統治で経営者のインセンティブを改善することは難しい。貿易自由化によって移行を推進し、産業競争力を高めていくには、むしろ、独占・寡占体制の解体などの競争政策を導入し、外部統治を重視した企業統治に配慮する必要がある。
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