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RIM 環太平洋ビジネス情報 2004年7月Vol.4 No.14

問われるわが国の構想力-東アジアの経済連携に向けて

2004年07月01日 環太平洋研究センター 三浦有史


要約

  1. 東アジアは、開放的な経済体制によって世界貿易を牽引し、貧困削減においても目覚しい成果をあげた。世界貿易に占める割合だけでなく、域内貿易比率も高めた東アジアにおける経済連携のポテンシャルは高い。域内貿易を促進したのは域内投資である。しかし、域内投資は投資誘致競争を激化させ、東アジアで保たれてきた競争と協調のバランスを崩す可能性がある。中国の台頭もASEANの二極化を促す作用がある。

  2. ASEANがAEC(ASEAN経済共同体)を推進するのに伴い、原加盟国と新規加盟国間の相互不信が高まる可能性がある。この問題に目を向けることなく、経済連携のメリットを語ることは無意味である。新規加盟国の改革に向けた自助努力を促すことが喫緊の課題である。格差問題は決して楽観を許さない。新規加盟国は、a.東アジアの生産ネットワークに組み込まれているとはいえない、b.政策の優先順位や制度能力をいかに構築するかという問題に直面している、c.ODAから外国直接投資および国内民間投資へと向かう原加盟国の投資パターンを踏襲する可能性が低い、ためである。エネルギーや環境問題はもちろん、貧困や不良債権など、中国が抱える構造的な問題から派生するリスクをどのように管理するかも重要な問題である。

  3. 中国の台頭や東アジアで進むFTAの波が、ASEANをより深い経済統合に向かわせている。しかし、ASEANは東アジアにおける経済連携の核としての役割を強化しようとすればするほど、不安定さが増すというジレンマに直面している。東アジアの経済連携においてASEANは欠くことの出来ない存在である。ASEANが連携の核として機能し続けるためには、東アジアの経済連携が進むことによって最も進んだ地域協力機構である必要があり、わが国はこれを地域の公共財と捉え積極的に支援する必要がある。

  4. 東アジアの経済連携には「日本抜き」も「中国抜き」もあり得ない。わが国は東アジアの経済連携に向けた道筋を見定めた戦略的な行動をとる必要がある。わが国のリーダーシップおよび構想力に東アジアの経済連携の命運がかかっており、その姿は今後の二国間経済連携協定における交渉やODA政策に反映されることとなろう。

  5. 東アジアの経済連携を進めるには、関係省庁の省益ではなく国益を優先した統合的な経済政策が必要である。わが国はNIEsやASEAN原加盟国との連携をはかりながら、ASEAN新規加盟国の改革に対する知的支援に積極的に取り組むべきである。東アジア側の視点からこの地域の未来を見渡すことが出来るか否か、わが国政府の力量が問われている。
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