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RIM 環太平洋ビジネス情報 2002年1月Vol.2 No.4

フィリピンの金融システムとその改革

2002年01月01日 清水聡


要約

  1. アジア通貨危機がフィリピンの実体経済や金融システムにもたらした影響は、IMFの支援を受けたタイやインドネシアに比べれば軽微であった。理由は、 1980年代に危機を経験したためにすでに金融改革が行われていたからである。通貨危機に対してフィリピンは比較的適切に対処したといえるが、その後の推移をみると、銀行部門の健全性は次第に悪化してきている。この問題は不良債権の増加が示すようにかなり深刻化しており、本格的な対処を要する段階に至っていると考えられる。

  2. 通貨危機の発生後、融資の伸び悩み、不良債権比率の上昇、銀行部門の収益率悪化などがみられる。大手格付け機関の見方も厳しいものになってきている。不良債権問題の背景には、経済情勢の悪化や不良債権処理の遅れ等があるが、実際には全体の不良債権比率が示す以上に深刻化している。その解決のためには、政府主導型の資産管理会社を設立することによって、政府が解決姿勢を明確にする必要があると考えられる。

  3. フィリピンの銀行は規模が小さく、統合促進により競争力強化を図ることが不可欠となっている。2000年の一般銀行法改正によって外国銀行の参入規制が緩和されたこともあり、大手商業銀行を中心に銀行の統合が進むとともに、外国銀行の活動も活発化している。しかし、銀行の統合にはデメリットを伴う懸念もあることから、その促進にあたり十分な配慮が必要とされる。

  4. 健全性規制、銀行監督、情報開示、法律整備などの分野で、規制・監督体制の改革が進展している。フィリピン特有の不透明性の改善への取り組みが重要なテーマの一つであり、特に最近注目されているマネー・ロンダリングへの取り組みは、着実な実施が期待される。

  5. 銀行部門の改革によって、銀行統合、外国銀行の参入、規制・監督体制の整備等がある程度進んだ。しかし、総合的に評価して銀行部門が健全であるとはいいがたく、改善の余地が残されている。不良債権処理の推進や銀行統合の促進のほかに、(1)銀行の内部リスク管理体制の確立、(2)銀行部門の競争促進、(3)銀行の内部ガバナンスの改善、(4)透明性の改善(情報開示強化)、(5)銀行の効率性の改善、(6)国内経済発展への貢献、などが課題であると考えられる。

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