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RIM 環太平洋ビジネス情報 2004年4月Vol.4 No.13

東南アジアとの経済・外交連携を強める中国

2004年04月01日 環太平洋研究センター 佐野淳也


要約

  1. 1991年末までに、中国は東南アジアのすべての国との国交正常化を実現した。それ以降の中国-東南アジア関係を前期と後期に分けて概観すると、90 年代末までの前期はシンガポールをはじめ、東南アジア各国との二国間経済関係の拡大には積極的であった半面、外交面での関係強化には消極的であった。とりわけ南シナ海の領有権問題では、非協調的な姿勢が顕著にみられた。

  2. 後期は2000年の中国-ASEAN首脳会議で「自由貿易関係の確立」を提唱して以降、東南アジア地域全体との連携強化を目指すようになった。また、安全保障面での非協調的な姿勢も変化してきている。

  3. 中国-ASEAN間のFTA交渉において、中国は東南アジアが求めた「アーリーハーベスト」を受け入れた。ただし、農作物76品目の貿易特化係数を算出すると、中国が一方的に譲歩した訳ではないことが明らかになった。一部の品目で輸入が急増し、国内の生産者にマイナスの影響をもたらすおそれがあるとしても、ASEANとのFTAを実現させたいという中国の強い意思がうかがえる。

  4. 中国が東南アジアとの連携強化を目指すようになった理由として、a.GDPの押し上げ効果、b.輸出市場の分散化、c.アジア通貨危機の教訓としての地域協力の必要性、d.周辺諸国との関係の安定化、e.「中国脅威論」の緩和などが指摘できる。

  5. FTA交渉等を通じて貿易や投資に関する障壁が低くなれば、東南アジア各国への輸出や東南アジアからの対中直接投資が促進され、中国のGDPを押し上げるであろう。地域間の格差是正の観点から、東南アジアに隣接する地域(雲南省など)への経済的効果も期待できる。その半面、国内農業への影響が懸念される。労働力の非農業部門への移動や土地の集約化などの措置により、農業の競争力強化に注力しているものの、現時点での成果は芳しくない。このような懸念材料が存在するなかで、東南アジアとの連携を強化しているところに、中国政府の強い意思が感じられる。
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