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RIM 環太平洋ビジネス情報 2002年10月Vol.2 No.7

ODAの新機軸を確立せよ-東アジアへの知的支援をODAの柱に

2002年10月01日 三浦有史


要約

  1. ODAに対する国民の不信の高まりに伴い、ODAに関する議論はその効率性はおろか、必要性にまで及び始めている。このような厳しい世論と財政事情を受けて、わが国のODAは大幅な削減を余儀なくされている。他方、アメリカはテロ撲滅には貧困削減への取り組みを強化する必要があるとの認識から、ODA 予算の増加が図られ、EUもこの動きに同調している。

  2. アメリカや世銀はODAの目的を貧困削減とし、貧困層の自立を促すために教育・医療分野への支援に重点を置き、供与にあたってはグッドガバナンス(良い統治)を条件とする方針を打ち出しており、これはODA政策の世界標準となりつつある。

  3. しかし、こうした流れはわが国のODA政策と相入れない。わが国のODAは、被援助国とのパートナーシップとオーナーシップをその基軸に据え、途上国と対等、かつ、未来志向の関係を築くべきである。

  4. 他方、途上国政府は、グローバル化に伴う不平等の拡大など多くの不安材料を抱え込むことになった。また、自由化プロセスの管理方法など、途上国政府の政策運営に対する重要性が高まっており、ODAに対するニーズも、単なるインフラ建設支援から知的支援へと移りつつある。

  5. 知的支援は、限られた資金でより大きな成果を期待できる一方で、育てるべき「改革の芽」がどこにあるのかを評価することが難しいという問題がある。改革の効果や持続性を評価するには、被援助国の経済や政治、さらに社会情勢などについて幅広い知識と理解が必要となる。また、政策のシークエンシングなどきめ細かい対応も必要とされる。

  6. 知的支援に取り組む場合、援助する側とされる側の間に揺るぎない信頼関係がなければならない。知的支援の出発点はパートナーシップにあり、この点から、わが国の知的支援は東アジア向けに行うことが最適と考えられる。東アジアの経済発展の特徴は、グローバル化を追い風として、貿易と投資の両面で世界経済をリードしてきたこと、域内のモノとカネが自己循環的な動きをみせていることにある。このため、わが国の知的支援は、二国間協力だけでなく、東アジアにおける地域協力という視点を持つことが必要である。

  7. 知的支援をわが国のODA政策の基軸とするには、知的支援を通じて東アジア各国の開発と地域のダイナミズムを促進することについて、各国の理解と参加を促す一方で、国内で必要な人材を組織するなどの体制整備を急ぐ必要がある。また、知的支援はその成果を確認することが難しいため、モニタリングや評価の方法を事前に決定し、支援のなかにパッケージとして組み込むことなどにより、評価の独立性と客観性を保つ工夫が必要になる。このため、現行のODA予算スキームの見直しやワーキング・グループの設立、国際協力評価庁(仮称)の設立など、根本的な改革が急がれる。
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