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Business & Economic Review 2001年07月号

【POLICY PROPOSALS】
公共事業改革の方向性

2001年06月25日 蜂屋勝弘


要約

公共事業改革の必要性が指摘される背景には、(1)財政状況の悪化、(2)世界的規模での環境保護機運の高まり、(3)人口動態の変化、(4)投資コストの低下など公共事業を巡る様々な環境の変化が指摘でき、このうち、(1)(2)は、中期的に公共事業の規模・内容を大きく見直すことの必要性を示し、(3)(4)は、将来のわが国にとって真に必要な社会資本整備を行える時期は今のうちであるとの示唆を与えている。

一方で、このような環境変化とは別に、(1)不透明な予算編成プロセスや事業計画プロセス、(2)硬直的な予算配分、(3)補正予算を主因とする事業規模の膨張、(4)効率性への疑義、など、公共事業自体の問題点も指摘されている。

以上のような点を踏まえると、あるべき改革の姿として、(1)公共事業配分の重点化、(2)個別事業計画・予算編成プロセスの改革、(3)事業コストの削減といった方向性が考えられる。

このような見直しを通じて、玉石混交の公共事業のなかから、不必要な社会資本整備を削ぎ落とし、必要な社会資本のみを最小のコストで整備できる体制づくりが可能となる。そうすることで、結果的に、公共事業の効率性向上と真に必要な分野の社会資本整備への重点投資、さらには政府の公共事業費負担の軽減という三つの目標の達成が可能となろう。

上記のような公共事業の改革は、財政健全化の観点からも極めて重要である。必要な社会資本整備が求められる一方で、現在の財政状況を勘案すると公共事業費(=社会資本整備にかかる公費負担)の削減も不可欠と考えられる。財政健全化の観点から求められる公共事業費の削減額の目安として、80年代の平均的な水準までの削減を念頭に置くことは不合理ではなかろう。

これは、90年代の公共事業の増加について、(1)景気の長期低迷、(2)少子・高齢化など人口動態の急激な変化、(3)超低金利の持続といった環境変化の下で、将来行われる予定の公共事業が前倒しで行われたとの解釈も可能であるからである。具体的な公共事業費削減の一つの目処は、2003年度以降10年間で年度事業費を2000年度実績対比35%程度削減することである。

もっとも、35%もの大幅な公共事業費の削減は、大胆な制度改革の断行なしには到底達成不可能である。そこで、制度上のどのような改革を行うと35 %もの大幅カットが可能かを考察すると、(1)補正予算による追加の禁止、(2)補助金の段階的縮小・廃止、(3)新規事業計画、既存事業計画の取捨選択、(4)国・地方・財投を視野に入れた見直し、といった改革を行う必要がある。

経済・社会の情報化、サービス化の進展に伴って、今後、アイデア、知識、技術といったソフト資産の不足が経済発展や生活向上のボトルネックとなる可能性は否定できず、公共投資の概念も、土木・建設といったハードへの投資から、知識・技術の集積といったソフトへの投資にまで広げる必要があろう。今後の公共事業には、ソフト・ハードの別なく、将来のわが国の経済発展と生活向上のために必要な資産は何かという発想が重要であり、まさに、政治・行政の先見性と柔軟性が問われているといえよう。
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