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RIM 環太平洋ビジネス情報 2003年4月Vol.3 No.9

中国における民営セクターの萌芽
成長期への課題

2003年04月01日 環太平洋研究センター 三浦有史


要約

  1. 中国では経済を国有セクターと非国有セクターに分け、非国有セクターの発展をもって、市場経済化が進んでいると評価する傾向がある。しかし、今後の市場経済化の安定性・持続性を占うには、非国有セクターの中の民営セクターがどういった経営環境に置かれているのか、また、経済のけん引役を担う存在になりうるかという点が重要である。

  2. 民営セクターに対する政策が90年代を通じで改善されたこともあり、民営セクターは就業人口に占める割合が著しく増加するなど、順調な成長を遂げてきた。民営セクターは第三次産業に多いものの、製造業の増加も著しい。

  3. 民営セクターは、需要の大きい大都市により多く設立される傾向にある。しかし、1社当たりの就業者数が増加する傾向はみられない。

  4. 移行国では、どのような民営化の手法を選択するかによって、a.企業統治の改善、b.民営化のスピード・実現性、c.歳入の増加など、政策目標間のトレードオフが生じる。中国でも、同様の問題が起こっている。

  5. 移行国の経験を踏まえ、中国における民営セクター発展の制約要因を整理すると次の5点が指摘出来る。
    a.民営化をおこなっても、民営セクターには、新規の起業によって生まれる企業(「純」民営企業)、国営企業が民営化された企業(「元」国営企業)、政府高官や官僚との個人的なコネクションを利用して設立される企業(「擬似」民営企業)が混在し、必ずしも、企業間の平等な競争条件(Level Playing Field)が保障されない。
    b.中国のガバナンスの状況は移行国のなかでは良好である。しかし、共産党の一党制が堅持されているため、ガバナンスが急激に低下することがない半面、急激な改善も望めないというジレンマを抱えている。民営化は、地方政府主導の不透明で恣意的な手続きによって進められており、その進展によって、今後、かえってガバナンスが低下する可能性がある。
    c.市場経済への移行段階では、企業の所有形態が多様化するが、そうした現実の変化に政治制度、官僚組織、経済制度、国民意識などが十分に対応出来ず、企業の取引費用(Transaction Cost)が高くなる。この問題は、新興勢力である民営セクター、なかでも「純」民営企業において顕在化する。
    d.民営セクターに対する参入規制は依然として厳しい。また、規制分野が必ずしも明確ではなく、その内容が省によって異なるため、官僚の裁量が働く余地が大きい。
    e.これまで蓄積された民営セクターに対するマイナスイメージが国民の間で現在も根強い。また、小規模な民営セクターは外的環境の変化の影響を受けやすい。
    f.「増量改革」やプラグマティズムにみられる中国独特の改革は、安定的な経済発展に寄与してきた。しかし、民営セクターを発展期に導くには、従来の政策手法だけでは不十分であり、民営セクター育成に焦点を当てた政策を展開する必要がある。
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