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Business & Economic Review 2001年02月号

【PERSPECTIVES】
課税最低限の水準に関する一考察-税額還付型所得補助制度を視野に入れて

2001年01月25日 蜂屋勝弘


少子・高齢化に伴うコスト負担の増加やわが国の財政状況への危機感を受け、国民負担増加の要請が強まっている。こうしたなか、個人所得課税に関しては、これまでの累進緩和、減税路線の継続に待ったがかけられている。政府税制調査会は、2000年7月の中期答申で、個人所得課税の現状に関して、「累次の税制改革の結果、既に相当の負担軽減が図られており、その水準は主要先進国中最も低く、特に中低所得者の負担が小さいものとなっています」と指摘したうえで、今後の方向性に関して、「個人所得課税の減税は既に限界に達しており、少なくともこれ以上の減税は行うべきではないと考えられます」としている。

中期答申における個人所得課税見直しのコンセプトは、公的サービスのコスト負担を国民に広く求めるというものである。具体的には、課税ベースを広く捉えることが求められており、検討課題としては、(1)所得税・住民税の課税最低限の見直し、(2)年金税制・退職金税制の見直し、(3)フリンジベネフィットへの課税、など多岐にわたる点が挙げられている。

本稿では、こうした論点のうち、所得税の課税最低限見直し問題を取り上げたい。現在、所得税・住民税に関しては、負担率の引き上げを視野に入れた見直しの必要性が指摘されている。実際、野党からは、国民に痛みの伴う改革として、課税最低限の引き下げが政策提言されている。

しかしながら、現状の所得税・住民税の負担率見直しの議論は、課税最低限の見直し(引き下げ)にのみ議論が集中している点で問題なしとしない。そもそも、所得税・住民税の負担率は、課税最低限と租率構造で決定されるものである。したがって、中期答申の指摘する税負担構造(「主要先進国中最も低く、特に中低所得者の負担が小さい」)は、現在の課税最低限の高いこともさることながら、最低税率や二段目の税率の低いことの結果でもあろう。

以上のような議論を受けて、本稿では、(1)そもそも、現在の課税最低限が高すぎるか否かを考察し、(2)所得税・住民税の負担率見直しの議論が課税最低限の見直しに偏ることの問題点を指摘したい。
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