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Business & Economic Review 2002年11月号

【REPORT】
バイオエネルギー事業普及のための課題と施策

2002年10月25日 創発戦略センター  木通秀樹


要約
  1. 廃棄物リサイクルなど資源循環の問題は21世紀の重要なテーマである。とくに、家畜糞尿、生ごみなどの有機性廃棄物から生成されるエネルギーは、地球温暖化ガスを排出しない新エネルギーとして注目が集まっている。しかし、このようなバイオエネルギーの生成・利用は普及していない。本稿では、普及に当たっての課題を明らかにするとともに、そのための施策として、官民協働の事業方式を導入し、地域の特性に合った事業モデルを提案する。

  2. 有機性廃棄物のなかでもとくに家畜糞尿は、全廃棄物量の20%近くに相当する年間約9,000万トンが排出されている。近年、その成分である窒素が硝酸性窒素となって地下水を汚染していることが分かってきた。また、生ごみは焼却時にダイオキシンを発生する原因にもなり、ごみ発電の効率性を低下させる廃棄物である。このような有機性廃棄物を有効利用出来る処理方法の確立が求められている。

  3. バイオマスのリサイクルにおいては、堆肥化やエネルギー利用が促進され、様々な法律も整備されてきている。ただし、現状では堆肥の需要は少なく、メタン発酵によってエネルギーを抽出する方法が効果的である。

  4. 現在、わが国の有機性廃棄物の適正処理は以下の三つの問題をかかえている。a.農家にコスト負担能力がない。b.狂牛病の発生により廃棄物リサイクルルートを再構築する必要がある。c.農業人口の減少や高齢化により廃棄物問題が拡大する可能性がある。

  5. こうした状況を打開するためには、環境保全の観点から公的資金を投入することも考えられる。具体的な投入方法は次の二つに代表される。一つは、処理施設の建設費の一部に補助金を投入する方法で、もう一つは、公的事業として施設の整備をしたうえで、運営面を民間に委ねる方法である。本稿では民間の能力を活用するうえで、最も適した事業方式を検討し、同事業の経済性をシミュレーションによって評価した。

  6. 家畜糞尿だけを処理する場合は事業の収入確保が難しいが、焼却炉で処理する生ごみを本事業で処理すれば焼却コストが回避できるので、総合的な自治体の財政負担が軽減する。ただし、分別された一般廃棄物である生ごみを収集することは難しく、収集量は地域の特性に依存する。このため、本事業は、施設建設に対する補助金のみでは事業の採算性をとることが困難であり、さらなる事業性の改善手段を導入する必要がある。

  7. そこで、改善スキームとして、官民協働により有機性廃棄物の処理・資源化の事業を検討する。代表的方法には、a.BOT方式とb.DBO方式がある。 BOT方式では、民間の経営能力の活用によって運営費や建設費のコストダウンを図ることが可能となる場合が多いが、公共直営事業に比べて、民間金融機関からの借り入れが必要となるなど、金利や税金の面でコストアップとなる。そのため、BOT方式を適用した場合は、大幅に運営費が削減できる場合にしかメリットが得られない。ただし、本事業をBOT方式で行う場合、民間が地域の有機性資源を総合的に利用することが可能となるので、自治体の財政負担軽減などのメリットが得られる。これに対して、家畜糞尿以外の有機性廃棄物が収集しにくい地域では、金利負担の小さいDBO方式が適している。

  8. 生ごみなどの他の有機性廃棄物が得られない地域においては、エネルギー生成効率の高いエネルギー作物を育成することによって、資源を生成することが望ましい。廃棄物の処理委託費収入や焼却回避コストによる自治体の財政的なメリットは得られないが、エネルギーの販売によって収入を得ることができる。とくに、菜種の絞りかすは、家畜糞尿の10倍近いエネルギーを生成することが出来る。これにより、有機性資源として家畜糞尿しか得られない地域でも、バイオエネルギー産業を創出することが可能となる。
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