コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

Business & Economic Review 2002年01月号

【POLICY PROPOSALS 】
社会保障制度改革と国民負担-持続可能な制度構築に向けて

2001年12月25日 調査部 金融・財政研究センター 蜂屋勝弘、調査部 金融・財政研究センター 古澤優子


要約

現役世代を中心に社会保障制度の持続可能性への不信感が強まっている。高齢者数の増加に伴って、今後、社会保障給付費の増加は不可避であり、同時に、財源確保のために国民負担の増加が見込まれる。現在の社会保障制度のままでは、国民の安心を確保し続けることは困難であると思われ、国民の安心確保には、将来の所得に対する不透明感や不確実性の払拭が不可欠である。

日本総合研究所調査部では、「社会保障制度研究会」を発足し、第1弾として、医療・介護制度を、第2弾として、公的年金制度を取り上げ、改革の方向性について具体的な政策提言を行ってきた。本稿では、第3弾として、これらの制度改革が財政および経済に及ぼす影響を検討し、社会保障制度改革を円滑に進めるための条件や環境整備について考察する。

制度改革によって、a.社会保障給付水準の抑制、b.財源に占める公費負担比率の上昇、c.経済成長へのプラス効果が達成され、社会保障の持続可能性への不安の緩和が期待される。現役世代には、a.国民年金の保険料の廃止、b.厚生年金保険料率の引き下げと長期固定化、c.医療給付にかかわる保険料負担の軽減、といったメリットがあり、高齢世代には、a.医療給付の対象年齢の 65歳への引き下げと医療費の自己負担比率の維持、b.既裁定者の年金の給付水準の維持、といったメリットがもたらされる。制度改革によって公費負担は増加するものの、消費税の引き上げなどによって財源を確保することで、改革による新たな財政赤字は発生しない。

わが国の国民負担率は、現在36.9 %(2001年度当初予算ベース)であり、欧州諸国などと比較した場合、追加的国民負担の余地が全くないとは言えない。しかし、国民負担率の上昇に比例して経済成長率が低下する可能性が高いことを勘案すると、相対的に経済活力がある米英と同様、50%を超えない努力をしていくことが望ましい。

当改革案は、英米型の負担構造を目指したものと位置付けられる。しかしながら、単に財政負担の軽減を目指すものではない。すなわち、社会保障給付の効率化を通じて、給付額の抑制は行うものの、必要不可欠な社会保障給付は、ナショナル・ミニマムの観点から税負担の増加を通じて、確実に保障されている。

制度改革に伴うマクロ経済への影響として、a.消費支出の減少幅の縮小、b.企業の設備投資の増加、が期待される。この結果、改革を行わない場合に比べて、実質GDP の減少幅は4.2%程度縮小する。

社会保障制度改革を行うにあたっては、改革をサポートするために、税制改革等を通じた環境整備が不可欠である。具体的には、a.消費税の福祉目的税化、b.少子化対策、c.税制の歪みの是正と不公平感の解消、に取り組まなければならない。
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ