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Business & Economic Review 2004年07月号

【REPORT】
日常利用で拡大するクレジット・カード市場

2004年06月25日 調査部 経済研究センター 岩崎薫里、ファイナンスシステム事業本部 藤山光雄


要約
  1. わが国では、クレジット・カードの利用が着実に拡大し、いまや現金、口座振替に次ぐ第3の決済手段として、消費者の間で定着している。

  2. 近年のクレジット・カード市場の拡大を促進しているのは、消費者によるカードの日常的な利用である。その背景として以下の4点が挙げられる。
    第1に、主婦によるカード保有および利用の増加である。年会費の引き下げや無料化によって、価格に敏感な主婦がカードを初めて保有する、あるいは複数枚保有するようになり、カードの特典を駆使しながら利用を増やしている。
    第2に、カードの利用可能範囲の拡大である。カード加盟店の数および種類が着実に増えている。さらに、オンライン・ショッピングが急速に普及しつつあり、クレジット・カードはそこでの主要な決済手段となっている。
    第3に、クレジット・カードの決済処理に要する時間の短縮である。オーソリゼーション(信用照会)速度の向上に加えて、サインレス決済の拡大がその背景にある。それによってカードの利便性が著しく向上するとともに、カードを利用することへの消費者の心理的負担が軽減された。
    第4に、カード発行会社による決済機能以外の付加価値の提供である。なかでも、ポイント・プログラムの拡充や、個々人のライフスタイルや趣味・嗜好に合致したカードの提供が、消費者のカードへの支持を高め、利用の促進につながっている。

  3. クレジット・カードの利用が拡大しているものの、個人消費に与える影響はこれまでのところ限定的である。わが国ではマンスリー・クリア(利用代金の翌月あるいは翌々月一括返済)が主流のため、リボルビング返済であれば生じる所得の先取り効果が期待できないうえ、超低金利のもとで、利用代金の返済期間までに得ることのできる運用益もきわめて限られるためである。

  4. 先行きを展望すると、a.医療機関、公共料金、オンライン・ショッピングなどでカード利用の拡大余地が大きいこと、b.高齢者によるカード利用の拡大や、まとめ買いの傾向の強い共働き家庭の増加など、人口動態・就労形態の変化がカード利用の追い風となること、などの点を踏まえると、クレジット・カード市場の一段の拡大が見込まれる。もっともその一方で、カード会員の獲得を巡る競争は一段と激化すると予想される。カード発行会社が市場拡大の恩恵を享受するためには、どうすれば消費者に選ばれるカードを提供できるか、について従来以上に知恵を絞っていく必要がある。
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