【要旨】 |
(イ) |
三位一位改革論議が再び盛り上がり。2006年度の最終年度に向け、議論は大詰め。しかし、三位一体改革の主目的、とりわけ、地方の自立と効率的な政府実現が達成できるか否かは依然予断を許さず。主因は、三位一体改革が抱える次の3問題。 |
(ロ) |
第1は税源偏在。地方圏、とりわけ税源が必ずしも十分でない地域では、国庫負担金の廃止に見合う税収の確保困難。加えて、地方交付税の抑制方針が厳格に実施されると地域によって深刻な歳入不足問題を招来するリスク大。警察や消防、義務教育は、基礎的な公的サービスとみる立場に立脚すれば、地域の経済格差によってナショナル・ミニマムが実現されない事態は容認不可。 |
(ハ) |
第2は歳出削減余地、地方政府の効率化はどこまで可能かという問題。主要先進各国と地方政府の規模を対比すると、資本形成では、今後一層の抑制・削減の余地有り。それに対して、政府消費は仏英2カ国と並んで最小規模であり、業務・事業の廃止や抜本的な見直しを行わない限り、歳出削減の余地は限定的なものにとどまる公算大。 |
(ニ) |
第3は資金配分のスキーム、すなわち、地方政府の財源調達ルートの問題。この点に関して先進主要5カ国(英仏独伊米)の仕組みを整理すると、次の特徴が指摘可能。
① |
5カ国とも国から地方への資金配分を実施。もっとも、その形態は国によって様々。 |
② |
国の税収が総税収の大半を占める英仏伊では交付金が地方政府の主要財源。 |
③ |
国と地方の税収が半々のドイツでは、州政府間の水平的財政調整を根幹としつつ、連邦政府との財政調整や特定補助金など資金移転制度を整備。なお建国以来、地方の独自性を重視するアメリカの資金移転制度は特定補助金のみで、世界的にも例外的。 | |
(ホ) |
翻ってわが国は、2002年全税収に占める国のシェアが57.9%、地方が42.1%。三位一体改革の3兆円税源移譲を加味すると、国54.1%、地方45.9%で米独とほぼ同水準。この点に着目すると、国から地方への資金移転よりも、むしろ、わが国現行制度では未整備である地域間財政調整システムの問題が三位一体改革の核心。 |
(ヘ) |
加えて、三位一体改革の主目的、とりわけ、地方の自立と効率的な政府の実現には、次の方策が焦眉の急。まず、①地方の自立には、財源の確保と国から地方への権限委譲が大前提。問題は、財源面ではナショナル・ミニマムの対象分野とサービス水準。権限委譲では規制をガイドラインとし基準を上回る各地域の取り組みを慫慂すべき。②効率的な政府では、NPOや企業、エージェンシーなど、公的サービスの提供主体の拡大と、それによるサービス向上を目指した主体間競争の成否が焦点。 |