コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

コラム「研究員のココロ」

「図書館」から「情報交流館」へ

2002年10月07日 日吉淳


 図書館といえば一人静かに読書や勉強をする場所というイメージがあります。夏休みには、自宅では集中できないから、涼しい図書館に篭って宿題の調べものや試験勉強などをした記憶は誰にでもあるのではないでしょうか。


 これまでの図書館は、図書を収集して住民に提供する機能を中心に、自主の場としても活用されてきました。近年では、書誌にとどまらず、視聴覚メディアへの取り組みも活発化しています。


 しかし、情報化の進展は図書館に大きな変革を迫っています。これまで図書館が担ってきた情報収集、蓄積、検索の機能については、インターネットを活用することにより自宅にいながらにして全国、世界の情報にアクセスすることが可能になってきています。特に、OPACと呼ばれる書誌データベースの検索システムの導入により、誰でもキーワードさえ入れれば全国各地の図書館の書誌情報を一瞬にして検索することが可能になりました。

 さらに、ネット通信販売の発達は、一般の書店には置いていない専門書や特殊な書籍へのアクセスを飛躍的に容易にしており、宅配サービスや近くのコンビニエンスストアであらゆる書籍を受け取ることができるようになりました。視聴覚メディアについても、ブロードバンド環境の整備により様々なコンテンツをオンラインで楽しめる時代が到来しつつあります。


 このままでは、図書館は単に図書を無料で借りられ、自習できる場の提供になってしまうことが危惧されます。特に、映画やCDなどの視聴覚メディアについては、レンタルビデオ店などの民業圧迫につながるという指摘もあり、また、自習の場としても、住宅事情の改善から以前ほどは重要な機能でなくなりつつあることから、図書館のあり方がまさに問われていると言えます。


 しかし、高齢化社会の進展に伴い、図書館に新たな役割が生まれつつあります。それは「生涯学習」というキーワードです。生涯学習時代の新たな図書館には、単に書誌や視聴覚資料を集めて貸し出すだけの機能ではなく、それらの資料をどのように使って学習を行うか、知的欲求を充足するかというアドバイザーとしての機能が重要になってきます。

 将来的には、住民へのサービス提供だけではなく、膨大な情報ストックを活用して、地域の中小企業支援やコミュニティビジネスの支援という切り口も求められてくるでしょう。また、住民の情報リテラシー向上のため、継続的なIT講習やインターネット利用の環境の提供も重要な役割と考えられます。


 さらに、知的活動を通じた住民の交流の場、コミュニティ活動の場としての役割も需要になってくることから、図書館においても利用者同士の交流の空間やグループでの利用の空間を積極的に提供していくことも必要になります。


 これからの図書館は、住民の様々な知的活動、学習活動を支援する「情報交流館」として生まれ変わることが求められています。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ