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本レポートでは、最近、警戒感が強まりつつある米国でのインフレ懸念の妥当性を検証するとともに、米金融政策の先行きを展望する。 |
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米国の消費者物価は、コアベースでは低位安定が続いている。今後のインフレ動向は、足許上昇の兆しが見え始めた単位労働コストが大きく上昇するか否かが鍵。 |
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(1)労働生産性の高い伸び、(2)企業の労働コスト抑制姿勢を勘案すると、賃金上昇圧力は当面抑制された状況が続く見込み。高い労働生産性は、IT資本の装備率の高まりに依拠しており、大幅な伸び鈍化は見込み難い。また、雇用は企業の利益率変動に応じて柔軟に調整される傾向が強まっているほか、グローバル化の進展が恒常的に労働分配率引き下げに作用している。 |
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加えて、依然▲1.3%程度のGDPギャップが残存。労働需給に関しても、見掛け上失業率は低下しているものの、労働参加率の低下が主因であり、実質的には依然6%台と高止まりしている。賃金インフレ圧力が強まるのは時期尚早、と判断される。 |
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Fedは、なお「慎重なペースでの利上げ」を当面維持できるだけの時間的余裕を有しており、景気が減速傾向を強めた場合には、景気が再び持ち直し傾向を強めるまで「利上げ小休止」のスタンスに転じる可能性がある。 |