コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

オピニオン

見つめなおされる農業の責任

2009年11月10日 古賀啓一


鳩山政権による温室効果ガスの25%削減宣言は非常に困難な挑戦だという認識が広がっています。これは、大企業を中心に既に取り組みを進めてきたという自負があるからです。しかし、温室効果ガス削減を当然のように取り組む企業が増える一方で、何から取り組めばいいかも分からないという企業も依然として存在します。25%という困難な目標に挑戦するためには、こうした企業も含めたオールジャパンの取り組みが欠かせません。

日本総研では、特に食品関連業界に向けて「食品産業CO2削減促進対策事業総合セミナー」を主催し、既に取り組みを始めた企業がどのように取り組み始めたのか、どの程度の効果が見込まれるのか、実例を通して紹介しています。特に実例については、「食品産業CO2削減大賞」の受賞企業の取り組みになるので、同じ業界で適用可能な取り組みも数多くあるでしょう。取り組みを始めるまでの苦労話などもありますので、削減取り組みが始められていない企業にはぜひご参加いただき、有効活用していただきたいと考えています。

企業単体でなく、食品業界全体での温室効果ガス削減のために「カーボンフットプリント」の研究も各社連携して進められています。これは、商品が生産地から消費者に届くまでにどの程度の温室効果ガスが排出されたのか、その排出量をCO2換算して商品に表示するというものです。消費者が商品を選ぶ際にカーボンフットプリントを選択基準のひとつとして加えるようになれば、製造業者や配送業者の取り組み促進につながることが期待されます。こうした環境が形作られるようになると、最も影響を受けるのは農業生産者なのかも知れません。なぜなら、現状では生産段階での排出が最も多いとする報告が出されているからです。本格的にカーボンフットプリントの表示が始まれば、農業生産側での取り組みも求められることになるでしょう。

今後、農業に求められるのは温室効果ガス削減だけではありません。環境問題のホットトピックとして企業が取り組み姿勢を見せ始めている生物多様性の保全は、国際会議の場で農業との関係からも議論されています。開墾や化学肥料・農薬の使用を伴う農業は、温室効果ガスには表れない重大な環境問題を引き起こしています。国内の農業や企業の調達状況についても、生物多様性を含めた広い視点からの見直しが進むのは避けられないでしょう。一方で、カーボンフットプリントのような商品の差別化の仕組みが整備されれば、市場における成功の可能性が膨らむことになります。

農業ブームが巻き起こっているおかげで、業種を越えた多様な企業が農業ビジネスへの参入意欲を持っています。私たちも次世代農業コンソーシアムを運営することで多様な知見の農業への活用を模索しています。今の日本は、食料自給率や食品の安全・安心などの既存の問題に加え、環境問題についても取り組むチャンスなのかもしれません。

食品産業CO2削減促進対策事業総合セミナー

食品産業CO2削減大賞


※執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ