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2005年02月21日

資源価格高騰のインパクト ~”分散型ディスインフレ”局面をどうみるか~

【要旨】
1.ここ数年来資源価格の上昇ペースが加速。要因はさまざまあるが、なかでも、中国をはじめとする新興国の高度成長の影響が大きい。試算によると、今後中国が9%程度の高度成長を続ける場合、2年後のわが国資源輸入価格は、現行水準から5割高となる可能性。

2.わが国企業の対応を整理すると、素材部門は投入コスト上昇分の約3分の2を川下段階へ転嫁。一方、加工部門は、産出価格の下落が続き、コスト転嫁どころか、最終販売価格下落に伴う収益下押し影響を流通部門と「共同負担」している状況。

3.対応の違いが生じている要因は、①事業集約化の進捗度の違い、②国内消費市場における「デフレの罠」、の2点。すなわち、家計需要の不芳に伴う消費者物価の下落と新興国の高度成長を原動力とした資源価格の高騰が併せて進むもとで、投入コスト増大の影響は基本的に製造業で吸収する必要。そうしたなか、グローバル競争が激化していることに加え、事業再編などを通じた経営体質強化、価格支配力増強の余地が相対的に多く残る加工部門に、より重い負担を課しているのが現状。

4.こうした認識のもと、資源価格高騰、輸出増加を通じた中国高度成長のわが国企業収益への影響を試算すると、①資源価格高騰(21.1%)に伴う下押し影響は素材部門▲1.0兆円、加工部門▲1.9兆円。②輸出増加(10.8%)による改善効果は、素材部門+0.6兆円、加工部門+1.3兆円、非製造業+1.1兆円。①、②をネットでみれば、経済全体への影響はほぼゼロながら、製造業に限ると、素材部門▲0.4兆円、加工部門▲0.7兆円と、各々の経常利益を約5%下押し。

5.一方、消費財の小売価格が昨年同様▲0.8%のペースで下落する場合、経済全体には価格効果だけで1.0兆円の収益圧迫要因に。流通部門からの「逆転嫁」の現状を踏まえると、加工部門はそのうち0.4兆円分を負担。結局、消費者物価の下落、資源価格高騰が今後も続けば、加工部門の経常利益は、両要因により▲1.1兆円(8%強)下押される可能性。

6.わが国企業部門は総じてみれば、「3つの過剰」の解消進展、世界景気拡大に伴う外需増加などから、過去最高の経常利益水準を実現。しかし、それは主に「数量景気」に支えられたものであり、物価体系をみると、産業別、企業別に投入・産出価格がバラつく「分散型ディスインフレ」の状況に直面。企業部門全体が今後、持続的な成長軌道を描いていくには、①経営資源の「選択と集中」を徹底し、グローバル市場での非価格競争力を高める、②労働への成果配分のあり方を見直し、収益拡大と雇用者所得増加の好循環が生まれる環境を整える、といった各社の努力により、「分散型ディスインフレ」局面を打開していく必要。

7.なお、資源価格高騰に伴うコスト負担の歪みを根本的に解消するには、消費者物価の安定的なプラス基調への転化が不可欠。その前提となる雇用者所得の増加基調が明確化していない状況では、政策当局にも慎重なスタンスが求められる。とりわけ、可処分所得の動向に直接的な影響を与える定率減税の縮小や将来的な消費税率引き上げについては、スケジュールに対する十分な検討が必要。
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