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自己主権型アイデンティティの動向と考察 ~企業のデジタルアイデンティティ戦略へ向け~

2024年04月26日 先端技術ラボ 市原紘平


本レポートでは、自己主権型アイデンティティ(SSI)の動向を整理・考察する。
自己主権型アイデンティティ(SSI)は、ブロックチェーンと共に語られることが多いが、その主要な要素技術はブロックチェーンと共に使用することを強制されているわけではない。また、同じ文脈で語られることが多い「DID/VC」も必ずしもセットで用いる必要はない。特にVCの活用は近い将来の話ではなく、実のところ人々にとって身近なアプリで既に本格的に実用されている。本レポートは、一つ一つの用語や技術の中身を確認していくことでこうした誤解を解き、理想的なデジタルアイデンティティのかたちを検討しやすくすることを目的として執筆した。

●デジタルアイデンティティへの注目の高まり
さまざまなITサービスの利便性向上へ向けた検討や、個人の属性情報に基づく広告ビジネスの隆盛などにより、デジタルな情報によるアイデンティティ(デジタルアイデンティティ)が注目されている。
個人情報を大量集積するITプラットフォーマへの問題意識などから、個人が自身で自身のデータを扱う権限を持って自身のアイデンティティを管理するSelf-Sovereign Identity(SSI, 自己主権型アイデンティティ)というムーブメントも隆盛している。

●関連技術の概要
Verifiable Credentials(VC, 検証可能な資格証明書)とは、属性情報を第三者に証明するためのデジタルの証明書の仕様。
W3C(Webで使用される技術の国際標準化団体)によって標準化されている。
保持者が、発行者から発行された対象者についてのVCを検証者へ提示する際に、電子署名技術や標準化されたデータ形式などによって、検証可能な資格証明を実現するもの。

Decentralized Identifiers(DIDs, 分散型識別子)とは、特定の事業者等に依存しない方式の識別子(Identifier)に関するデータモデル標準。W3Cによって標準化されている。
他の技術と組み合わせることで自己主権型アイデンティティ(SSI)を実現し得るとされる。(SSIを実現する要素技術となり得るもの)

●考察
アイデンティティ管理において自己主権型が最適解かは、ユーザのニーズや知識水準を考慮して慎重に判断する必要がある。
ユーザの利便性や安全性が向上せず、イデオロギーを押し付けるだけになってしまうとユーザや社会からの理解は得られない。
企業側の検討余地として、データを自身で管理するというユーザの能動的な行動が、コミュニティへの帰属感や企業へのエンゲージメント向上へ繋がるという仮説[1]を立てられるのではないか。
一方、政府のデジタルアイデンティティの取組として、『公的個人認証サービスと紐付けられた民間ID』[2]があり、本人確認が確実に行われた民間IDは活用の幅が広く、企業としては目的志向で最適なデジタル戦略を採ることが望まれる。

[1] https://www.smfg.co.jp/dx_link/article/0072.html
[2] https://www.soumu.go.jp/main_content/000762342.pdf

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