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JRIレビュー Vol.4,No.115

就労のジェンダー平等と育休環境のあるべき姿

2024年04月18日 藤波匠


政府は、少子化対策および女性活躍の観点から「共働き・共育て」社会の構築を目指し、育休制度の充実などに力を入れている。「共働き」の視点では、結婚・子育て期の女性の就労率が低下するM字カーブはほぼ消滅しており、政府の目論見はおおむね達成されつつあるように見える。

一方、「共育て」の方は、過去10年で夫婦がそれぞれ「家事・育児」に費やす時間に大きな変化は見られず、女性が主にそれらを担う状況にある。女性の労働時間が伸びる状況下、「家事・育児」の負担が女性の重荷になっており、そうした状況が結婚・出産に対する女性の意欲の低下をもたらす一因となっているとみられる。政府は育休制度の充実に力を入れており、とりわけ男性の育休取得促進を図っているものの、男性の育休取得率は2022年実績で17%にとどまり、取得者でも過半数が2週間以内の短期が中心である(2021年実績)。

近年では、男性に育休取得を推奨する企業が増えてきたこともあり、今後男性の育休取得率は上昇してくることが期待されるものの、取得期間については女性と同水準に至るには相当の時間を要することが見込まれる。その一因として、職場に依然として残る男性が長期の休暇を取得しづらい雰囲気や、雇用慣行におけるジェンダーギャップの存在がある。とりわけ賃金や昇進、正規雇用比率に見られる男性優位の状況や、主にこれまで男性が担ってきた長時間労働を前提とした働き方が改善されない状況では、妻が家事・育児を担い、夫が仕事に注力するという構図を崩すことは容易ではないとみられる。

賃金や昇進、正規雇用など、雇用慣行に見られるジェンダーギャップは、業種による差異が明確で、その対策も業種により異なるものが求められる。例えば、非正規女性への依存度の高い「宿泊業,飲食サービス業」では、正規職として働いている女性と男性の賃金や昇進に関する格差は小さい傾向にあるため、非正規女性のスムースな正規転換が課題となる。一方、非正規女性の少ない「金融業,保険業」では、正規職として働く女性と男性の格差が大きい傾向にあるため、正規職女性の賃金引き上げや役職者への登用などに注力していくことが必要となる。各社が自らのジェンダーギャップの状況を見極めたうえで、適切な対策を講じることが必要である。

行政は、長期休暇者の出現によって厳しい人繰りが予想される中小企業においても、男性の育休取得を促進するため、企業のDXや設備投資を支援し、省力化を後押しすることが必要となる。加えて、例えば明らかな男女格差が生じている管理職登用の状況を改善するために、各企業で女性登用に数値目標を設定したうえで、実質的に男女が等しく企業運営にかかわることを可能とするため、ある局面においては意図して女性が有利になるよう扱うポジティブアクションの導入を促すことも必要となろう。

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