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JRIレビュー Vol.4,No.115

工業系公設試験研究機関への期待と課題-研究開発支援を通じた地域経済の活性化-

2024年04月18日 若林厚仁


多くの地方都市では製造業が基盤産業となっており、製造業の成長が地域経済活性化のカギを握る。地方でも人手不足が深刻化するなか、成長には労働生産性の向上が不可欠であるが、製造業における中小企業の労働生産性は低い。その原因は企業によって千差万別であるが、本稿では、中小企業の研究開発の不十分さとその背景にあるリソース不足に焦点を当てる。研究開発を行っている中小企業は1割以下という調査結果もあり、技術やアイデアはあるが、資本・人材・情報などのリソースが不足している中小企業の研究開発を支援していくことが重要課題となっている。

こうしたなか、中小企業の研究開発を技術面から支援しているのが、公設試験研究機関(公設試)である。公設試は各都道府県や一部政令指定都市が設置する公的機関で、技術相談や依頼試験・分析、機器・装置利用、共同・受託研究といった支援を低料金で提供している。地方では、高い技術力を持った中堅・中小製造業が地域経済をけん引していることも多く、公設試はこうした企業の支援・育成を通じて、地域産業の振興に貢献している。

公設試は中小企業にとって敷居の低い身近な相談窓口であるものの、営利目的でない公的機関のため、総じて小規模で、財源の大部分を地方自治体からの交付金に依存している。このため、多くの公設試で自所単独では対応できない技術相談を受けるケースがあるほか、財源不足による設備老朽化や新規採用抑制といった問題を抱えている。

こうした問題の解決策として考えられるのが広域連携の強化である。すでに全国の各公設試において、近隣の公設試や大学等と様々な連携が行われているものの、時間の経過とともに連携機能が低下しているものも少なくない。こうしたなか、①国立研究開発法人の産業技術総合研究所へワンストップで相談可能な「産技連ワンストップ全国相談窓口」(2023年開始)の積極的な活用、②関西の公設試情報を集約したポータルサイトや連携コーディネーターを設置している「関西広域産業共創プラットフォーム」(2022年開始)の活用および同様のスキームの他圏域での展開などは検討に値する。

また、多くの公設試は、地場企業の多様なニーズに応えるために幅広い分野をカバーしているが、地域産業は特定分野に強みを持つことが多く、支援ニーズが特定分野や技術に偏る傾向がある。そのため、各公設試が専門性の向上や専門機器への重点投資を進めることも一案である。当然、特定分野以外のニーズへの対応能力は低下する可能性もあるが、広域連携をさらに深化させ、複数の公設試がカバーし合う仕組みを整えれば、より効率的な支援が可能となる。専門性の向上と公設試同士の連携を図り、相談を受けた中小企業に質の高いサービスを提供することで、企業からの収入を増やしていくことも可能となろう。

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