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リサーチ・レポート No.2023-020

中央銀行の“財政優越”回避に向けての課題-ECB、ユーロシステムの対応にみるわが国への示唆-

2024年03月27日 河村小百合


コロナ危機下では、前代未聞の規模での財政出動と中央銀行による国債買い入れという政策の組み合わせが主要国・地域で軒並み採られた。やむを得なかったとはいえ、これは、中央銀行が財政運営を安易に持続可能にする金融政策運営を行い、結果的に“中長期的な物価の安定”という中央銀行本来のマンデートが犠牲にされて、国民が高インフレという形で重い負担を被る「財政優越」(Fiscal Dominance)状態に陥ってしまうというリスクをはらむ。

ECB では「財政優越」を回避すべく、これまで国債の買い入れに制約を設けてきた。コロナ危機下の買い入れではその制約は外されたが、今後の正常化の進め方が注目される。

ユーロ圏では利上げ局面において、健全財政国ほど中央銀行の財務悪化の程度が増すという皮肉な現実がみられるが、各加盟中央銀行は、従前よりあらかじめ引当金を積み増すなどしており、政府サイドとも協議しつつ、“国庫納付金ゼロ”状態を乗り切るべく、対応を重ねている。

一方、日銀が去る 2024 年3月 19 日、マイナス金利政策の解除をはじめ、黒田前総裁時代から続けてきた、「量的・質的金融緩和」における一連の非伝統的な手段による政策運営をすべて終了させることを決定したことは評価できる。

ただし、日銀の対応には、なお重大な懸念が残る。それは、“財政優越”を回避するための対応に、全くと言ってよいほど手が付けられていない点である。ECB をはじめ、他の主要中銀がいずれも、利上げ転換のタイミングで資産縮小の計画を立て、実行に移しているにもかかわらず、日銀は今に至るまで検討した形跡もみせることなく、国債の買い入れも当面継続するとしている。先々悪化が必至の財務運営面でも、巨額の国庫納付金を一般会計に納め続けている。

これまで長年にわたり、“事実上の財政ファイナンス”状態を継続してきたわが国としては、ユーロ圏や ECB 以上に、“財政優越”状態から脱却する道筋を確立していくことが、今後も安定的な経済運営を続けていくうえで、喫緊の課題である。

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