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リサーチ・フォーカス No.2023-054

介護の社会化と介護人材確保に向けて

2024年03月26日 岡元真希子


介護職員数は2022年に減少に転じた。要介護高齢者は今後も増加が予想され、介護需要に供給が追いつかなくなる恐れがある。介護保険制度の導入後、国民の意識も変化し、事業者による介護を希望する人が半数を超えた。主たる介護者が家族である割合は6割弱まで減少するなど、家族介護から事業者による介護へと、介護の社会化が進んできた。

家族介護の中心的役割を担ってきた50~69歳の女性の就業率は2000年以降急伸している。背景には複数の要因があるが、介護保険サービスによる家族介護負担の軽減もそのひとつとして挙げられる。介護と仕事の両立が進み、現在、家族介護をしている50~64歳の女性において、有業者の数は無業者を上回る。

現在、介護をしながら働く50歳以上の女性が介護サービス不足のため離職を余儀なくされ、有業介護者の割合が2003年当時の水準まで落ち込むと仮定すると、無業に移行する女性就業者数は25万人強、失われる賃金総額は6,500億円程度と推計される。中高年女性が介護離職した場合、介護が終了した後に再就業する割合は低く、そのまま非労働力人口となる場合も多いとみられる。

2024年の介護報酬改定では処遇改善加算の見直しが行われた。これまでの報酬改定でも賃金と就業環境の両面からの処遇改善が目指されてきたが、依然として全産業平均とは大きな開きがある。介護人材の流出傾向が今後も続けば、要介護認定を受けても介護サービス給付が受けられないという状況が生じかねない。

未婚化やきょうだい数の減少などによる家族機能の縮小に対応するには介護の社会化を一段と進める必要がある。多くの人は自分自身が介護を受ける際と、親族の介護に携わる際の二重の意味で、介護保険給付に助けられることになる。介護人材の処遇改善には介護保険料の上昇が必然となるが、制度の信頼性と持続可能性を維持し、必要な給付を保障するために、介護従事者確保にあたって必要な費用を社会で負担していくための合意形成が早急に求められる。


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